人気ブログランキング | 話題のタグを見る

La Cerise d’Itxassou

初めてバスク地方を訪れたのは1991年、Itxassou村へ行ったのはそれから8年後のことでした。

La Cerise d’Itxassou_b0189215_17412958.jpg訪問したのは10月で残念ながらサクランボの季節ではありませんでしたが、廃れかけていた地元品種の復興を目指して1986年頃から毎年少しずつ苗を植え続けているというMirentxu Elissaldeさんのことを知り、ぜひお話を聞きたいと思ったのです。
でも、ちょうど彼女が結婚したばかりでアフリカにハネムーンへ行ってしまった為、この時は本人にお目にかかることは出来ず…。
でもお母さんと彼女の同僚の方がサクランボの種類や果樹園の見学をさせてくださいました。
そして翌年の6月ちょうどサクランボ祭りの後に再び訪問、ようやくMirentxuさんとお会いすることが出来たのです。 

La Cerise d’Itxassou_b0189215_1571715.jpg家へと続く小道の両脇にはMirentxuさんのおじいさんが植えたという大きなサクランボの木があります。果樹園には収穫がしやすいようにと小さい木(3~4m)が植えられていました。

→ 10月の訪問時に写したサクランボの木

本来バスク地方は雨が多くサクランボの栽培には適しておらず、ここ以外では育たないそう。この村だけは土壌があっていて上手く育つのだとか。 雨が多い中、花の咲く時期と実の熟す時にあまり雨が降らないそうで、不思議な偶然から栽培に適した土地だったのです。

さっそくサクランボの試食。
早生品種のPeloaはもう終わっていたのでありませんでしたが、まずは家の前に植わっている赤くて実の小さいXapataを。次は車で移動し、BeltxaとBeltxa系のもう1つの品種のサクランボを摘んで試食させてくれました。
La Cerise d’Itxassou_b0189215_15222382.jpg← Xapata
La Cerise d’Itxassou_b0189215_1539570.jpg← Beltxa

La Cerise d’Itxassou_b0189215_152742.jpgLa Cerise d’Itxassou_b0189215_15322170.jpg
おじいさんの時代(1930-50年代)が最盛期で、300トンが村のマルシェで売買されていたそうです。
しかしそれ以降は味よりも見た目を重視の、大きくて美しい日持ちする品種が好まれるようになり、それまで育てられていた昔ながらの小さくて痛みやすい品種は次第に廃れていき、80年代前半には15トンまで減少してしまいました。

世の中が見た目重視から本物の味のあるものへと戻り始めると、Itxassouのサクランボの需要が増加。
それまでの生産量では足りなくなり、偽のItxassou産コンフィチュールまで出回るようになりました。
それを憂いた彼女は同僚らと共に1994年、association XapataとGIE Cerises d’Itxassou/Itsasuをつくり、3品種の本格的な再導入を始めます。
* association XapataはItxassouの品種を保存、供給する協会。
* GIE Cerises d’Itxassou/Itsasuは伝統的な品種を再び植え、栽培法の研究や加工に必要な道具などの共同購入、ロゴ製作、商標登録するなどして生産品を消費者に分かりやすくアピールする為の生産者の集まり。


さて、Itxassouの昔からの古い品種はXapata, Peloa, Beltxa, Garroa, la Bilarroa, Markixta ...と色々あるようですが、中でも代表的なのは次の3種類。
* La Peloa
5月末に熟す、早生品種の黒サクランボ。肉厚で果汁に富み、実が崩れやすい品種でコンフィチュールに適している。
* La Xapata
6月上旬-中旬に熟す赤実サクランボ。実は小粒で甘く、酸味もある。生食に適していて美味しい。これで作ったコンフィチュールはフォアグラに合う。
* La Gerezi Beltxa
6月下旬に熟す、黒サクランボ。小粒で少し苦味があり、コンフィチュールにすると美味しい。Gâteau Basqueはこれで作ると最高。地元の羊乳チーズにもぴったり。十数年前は村に15本しかなかった。


La Cerise d’Itxassou_b0189215_16551650.jpg→ Fromage de Brebisと彼女のサクランボのコンフィチュール。
羊のチーズは日本で食べられるものよりも更に熟成して旨味が凝縮している感じで相性はピッタリ!
 

La Cerise d’Itxassou_b0189215_15484026.jpg毎年6月第1日曜日にla Fête de la ceriseが行われています。
今年は6月7日でした。
1949年「Fête de la Terre」という名前で始まり、数年後「Fête de la cerise」に変っています。
このお祭りはL’association Itsasuarrakによって開催されており、その収益は会の施設維持や様々なセクション(pelote、danse等)の活動にも使われるそうです。
この日はサクランボの販売だけではなく、ダンス等バスク色あふれた催しが行われるお祭りなのです。

← 祭の時に使われたサクランボのスタンド

2007年5月にはConfrerie de la Cerise d'Itxassou(☆)が発足。
毎年5月の最終土曜日にchapitreと呼ばれる会合(他のConfreriesも集まり、入会式も行われる)が開かれ、同時に土日を通してItxassouのサクランボや地元の産物を販売するマルシェが開かれます。

その為、ほぼ同時期に2つのサクランボ祭りが開催されるようになり、村で一番活気あふれる時といえるでしょう。

Mirentxuさんは目標をはっきりと持ち、どのようにしたら達成できるか考え、計画的に、積極的に進めて実現出来る人で、自ら園芸学校でサクランボ栽培を学んだりと、するべきことを淡々とこなすタイプ。
↓ Mirentxuさんと愛犬
La Cerise d’Itxassou_b0189215_16162078.jpg
自分だけよければいいということではなく、村のためにどうしたらいいのかを冷静に判断し、実行していく姿はとても素敵だと感じました。
訪問して初めてお会いした時、最初に「何をしたいのか?」を聞かれ、あちこち電話してテキパキと手配してくれたことにもその人柄がよく表れています。

また数年前、彼女の村やこの地域を紹介する施設を作りたいという希望が叶い、
* ATEKA – Mémoires Vivantes du Village d'Itxassou
Place du Fronton – 64250 ITXASSOU  Tel : 05.59.29.32.74     
が作られました。
ここにはKrakadaというPâtisserie-Salon de Théが併設されていて、サクランボ製品や地元特産品が色々あると聞きます。
また是非サクランボの季節に行ってみたいものです。




※※※



にほんブログ村 スイーツブログへ
にほんブログ村 旅行ブログ フランス旅行へ

Commented by paris-antique at 2009-07-06 20:30
もう感動しちゃいました!
この記事は私の中では永久保存版です!
ありがとうございます!こんな素敵な記事を書いてくださって(^^

そうそうATEKA・・・行きました。
ボネさんのところに泊まったので,すぐ近所だったのです。
ビデオが上映されていて,小さな博物館の様になっていて
テラスから放し飼いの羊の群れが見えて,素敵な場所でした(^^
私も今度は6月に行って,本場のさくらんぼが実っている
ところを,見たいのです~! 

そうそう~ガトーバスクを統一するガトーバスク協会なるものは
結局作られていないですよね(笑)
そういう動きがあったみたいでこの村の人がこぼしていました。。。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2009-07-08 00:00
◎paris-antiqueさん
そう言っていただけてとっても嬉しいです!
ATEKA行かれたのですね~♪行きた~い!

へぇ~ガトーバスク協会設立の動きがあったのですか!
自分が会長になりたいという人は数人いるような気がしますので
まとめるのは難しかったのでしょうか・・・。
Commented by chihiring at 2009-07-10 08:41 x
後姿で写っている羊さんは、愛犬さんなんですね~か、かわいすぎっ!そして、バスク、ほんとに憧れ訪れたい地、このblogで旅させてもらってます(笑)羊のチーズに、コンフィチュールいいですね~ワインは何があいますか?
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2009-07-11 12:13
◎chihiringさん
そうそう、写真の犬はMirentxuさんの愛犬。
マネッシュ種の羊も飼っているので、牧羊犬なのかも。
ここにはジャムを作るMirentxuさんの工房とチーズを作る職人さんの工房もあるんです。
チーズ職人さんは羊乳の採れる季節のみバスクにいて、他の季節は別のところでチーズを作っているのだとか。

羊のチーズにサクランボのコンフィチュールの組み合わせ。
実際にワインと合わせたことは無いのですが、地元のイルレゴギーなら絶対はずれがないですよね。
他にはマディラン(アラン・ブリュモンなら完璧!)なんかも良さそうだし、南仏のシラーやグルナッシュ系もいいし。
チーズの具合によってベストマッチは変りますから実際に試してみたくなりますね♪
Commented by chihiring at 2009-07-12 20:46 x
地元のイルレゴギー、初めて聞きました!合わせてみたいなぁ~SDCの時に、オッソ・イラティーをroiboitやT子さんにお薦めしてもらってから、羊チーズ大好きになりましたよ!さくらんぼのコンフィチュールに合わせてみます。うーん、またワイン会やりたいですね♪
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2009-07-13 13:07
あらやだ「イレルギー(→Irouléguy)」って書いたつもりだったのになんで「イルレゴギー」になっちゃったんだろー(汗)???(ごめんね)
ほんと、ワイン会大賛成~♪
Commented by M at 2013-04-11 12:29 x
いいなぁ。サクランボ農家でサクランボの食べ比べとは羨ましい。
しかもバスクの本場で。そうそう、バスクと言ったら羊チーズにサクランボのコンフィチュールを合わせて食べる!これがしたいと思ってました。
La Peloa、La Xapata、La Gerezi Beltxaのガトー・バスク、たべてみたいですねぇ。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-11 22:37
Mさん ホント、3種類のサクランボをつかったガトー・バスクの食べ比べ、してみたいですね^^
by Ethno-PATISSERIE | 2009-07-03 17:49 | ②Aquitaine | Trackback | Comments(8)

<仏蘭西菓子研究所>フランス地方菓子&行事菓子 ガトーデロワ&フェーヴ *by roiboit*


by roiboit