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Agneau pascal ;アニョー・パスカル(復活祭の仔羊)

Agneau pascal ;アニョー・パスカルはアルザス地方で復活祭の時に食べられるお菓子。
地元Soufflenheim ;スフレンナイムで作られる陶器型を使って焼かれます。
復活祭は移動祝祭日で、今年(2011年)は4月24日がその日。
Agneau pascal ;アニョー・パスカル(復活祭の仔羊)_b0189215_21131491.jpg

フランス語でAgneau pascal 或いはAgneau de Paquesと書かれるこの菓子は、
アルザス語ではOschterlammele,Lammala, lämele , Haemele, hamele等々、地域によって微妙に違います。

*Soufflenheimカタカナではスフレンハイム、スフレンアイムと書かれていることが多いようですが、
スフレンナイム(より正確にはスフロンナイム)の方が実際の発音に近いように思います。


季節になるとパン屋さんやお菓子屋さんのショーウインドーに沢山並びます。
伝統的なアニョー・パスカルには粉砂糖を振った後、赤いリボンを首に結び、背中には赤と白(アルザスの旗の色)か黄と白(バチカン国旗の色)の旗がたてられるそうですが、実際には様々な色のリボンや旗が使われています。

<参考>
* バチカンの国旗はこちら
* アルザス地方の旗はこちら


多くの場合ビスキュイ生地で作られていますが、
アルザスに住むフェーヴコレクター友達はクグロフ生地(発酵生地)で作っていたそうです。
復活祭の日の朝食やおやつの時間にコーヒーや紅茶に浸して、或いはアルザスの白ワイン(Gewurztraminer vendanges tardives等々)と一緒に供されます。
Agneau pascal ;アニョー・パスカル(復活祭の仔羊)_b0189215_22303463.jpg

かつては復活祭のミサの後、名付け親から名付け子へこの菓子を贈る習慣がありました。

この習慣は16世紀に遡ると言われています。
1519年、アルザスのキリスト教神学者Thomas Murner(1475年―1537年)が書簡の中で
「男性がフィアンセの女性にアニョー・パスカルを贈っていた」ことや
「復活祭のミサの帰り、子供たちに贈られていた」ことに言及しているのだそうです。

一方「Les Moules à gâteaux/Bernard Demay著」によれば
陶器のクグロフ型は17世紀から、仔羊や魚形等の型は18世紀から広く作られるようになったとあります。

祝い菓子は元々普段作られるパン生地に卵や砂糖、牛乳などを加えて作られたものでした。
同じ陶器型で焼かれるクグロフが現在でも発酵生地で作られていることや、
上記のように現在でも発酵生地で作る人もいることから、
アニョー・パスカルもかつては発酵生地で作られていたことは想像に難くありません。

発酵生地であれば家庭でも材料が揃いやすく、
オーブンが無くてもパン屋さんに持っていって焼いてもらうことが可能でした。

ビスキュイ生地の材料は小麦粉、卵、砂糖だけでバターも使わない為、比較的誰にでも作りやすいものです。
とは言え、かつて高価であった砂糖が多く使われ、泡立てる道具や技術も必要であり
生地が出来たらすぐオーブンで焼く必要もあることから、
一般的な家庭でも広く作られるようになるにはそれらの条件が整っていなければなりません。
18世紀末になって、それまでの暖炉での直火調理から竈へと変化していったことにより
家庭でもビスキュイ生地のアニョー・パスカルが作られるようになったのではないかと思われます。


現在これらの型はストラスブールの北40km程の所にあるSoufflenheim ;スフレンナイムで作られています。
すぐ近くにあるHaguenau ;アグノーの森からは陶土が採れ、窯に使われる薪も調達できることから
古代から陶器製造で有名な所でした。
19世紀まではアルザス地方の各町や村には、それぞれ陶器製の生活用品を作る為に陶器職人が居ました。
作り手の職人によって独自のスタイル、釉薬の色のものが作られた為、古い陶器型には様々なものが存在しています。
かつて子供に贈る習慣があったことから複数の型を所有していた家庭も多かったためか
蚤の市等でもこの型を目にすることができます。

Agneau pascal ;アニョー・パスカル(復活祭の仔羊)_b0189215_2125660.jpg私が持っているアニョーの型は大小4個。
一番小さなものはニーデルモルシュヴィルにある
メゾン・フェルベールで買ったもの。
この店で販売されている陶器の型はスフレンナイムで最も古い1802年創業の工房「Poterie Friedmann」製で、
特にクグロフ型はクリスチーヌさんが気にいった形に作って貰ったという特注品です。
(煙突部分が細くデザインされていて、ふっくら美しいクグロフに仕上がります^^)
1888年創業の「Poterie Philippe Lehmann」製の型も
なかなかハンサムに焼き上がります。

この子羊型の他にも魚、ユリの花、星、ザリガニ等々、色々な形の陶器型があり、それぞれに作られる時期やこめられる願いがあり、アルザス地方菓子の特徴的なものと言えます。
(これらの型は現在でもPoterie Friedmannで製造されています)

← 下の小さいのがフェルベールさんのお店で買った子羊型

<参考>
*こちらはスフレンナイムの工房でアニョー・パスカル型を製造している映像です。興味のある方は是非ご覧ください。


そしてこちらは福岡にあるオーストリア菓子サイラーで買った「Osterlamm;オースタラム」。
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小旗も付いた本格的なもので、ローマジパンを使った生地で出来ています。
まわりの白いのは粉砂糖ではなくてココナッツ。
アプリコットジャムを塗った後にココナッツをまぶしてあるので、適度に酸味もあって美味しい~♪

2000年4月にはじめてお店を訪れた時購入した「オースタラム」はクルミ入りでした。
知らずに買ってしまったのですが、クルミアレルギーの私は結局食べられず…(涙)。
(今年のはクルミを使っていないということでリベンジです^^)


復活祭、詳細についてはまた次回

Commented by M at 2013-04-01 08:14 x
roiboitさんのアニョーが食べたいです!
フルーツサラダとフランボワーズソース、そしてクレーム・シャンティというのがいいです。
羊型をフェルベールさんのお店で買ったんですね。
この時期はフランスに居ると美味しいお菓子と羊料理で太りますよねぇ。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-01 19:39
Mさん そう言って頂けると嬉しいです♪
他にクリスチーヌオリジナルのクグロフ型を買ったのでアニョーは小さいサイズで我慢しました^^
Commented by M at 2013-04-01 19:47 x
そうでした、アルザスと言えばクグロフですね。
食べた事ないのですよ。日本でも買えますが、本場のが一番と決めてるので日本では食べません!
クグロフ型もあると言う事は、作られるんですね。
いいなぁ〜。手作りのは格別に美味しいでしょうね。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-02 14:56
Mさん おっしゃる通り地方菓子は現地で食べるのが一番美味しいです。アルザスで是非♪
by Ethno-PATISSERIE | 2011-04-20 22:36 | ①Alsace | Trackback | Comments(4)

<仏蘭西菓子研究所>フランス地方菓子&行事菓子 ガトーデロワ&フェーヴ *by roiboit*


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