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「Poisson d’Avril;ポワソン・ダブリル」とそのお菓子、そして魚形フェーヴ

4月1日はエイプリル・フール、フランスではPoisson d’Avril;ポワソン・ダブリル(四月の魚)と呼ばれます。
ちょっとした嘘をついたり、 いたずらをしてもいい日があるなんてちょっと不思議。

この習慣の起源ははっきりしておらず、多くの説があっていずれも仮説の域を出ないものばかりですが、
中で最も多く挙げられる説は
1564年フランス国王 シャルル9世がEdit de Roussillon(ルシヨンの勅令)で、
復活祭の日だった元旦を1月1日に改めたことがきっかけだった

と言うもの。

古代ローマで使われていたローマ暦も、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)によって制定された
ユリウス暦も、1年の始まりは1月1日でしたが、実際に各地で採用されていた日とは異なっていたようです。
この当時もフランスでは復活祭の日を新年初日としていました(ただし地方によって異なる)。

改めて元日となった1565年1月1日、皆はいつも新年を祝うようにお年玉やプレゼントを 贈り合います。
しかし「この変更を受け入れられないものや、知らせが行き渡らず変わったことを知らない人たちによって、
今までの習慣から4月1日に新年を祝う習慣が続けられ、そのように現実を受け入れない人たちに
実用的ではないものや嘘のプレゼントを贈ってからかうようになった
」ということで 、
次第にこの日にいたずらや悪ふざけをする習慣が出来たというのです。

シャルル9世が1564年に元日を1月1日に定めた後、ヨーロッパではユリウス暦にかわって現在用いられているグレゴリオ暦が用いられるようになり、フランスでは1582年に採用されています。
こんなにこよみが変わったのでは国民が混乱して反発したくなる気持ちも分かるような・・・。


とは言え、「Poisson;ポワソン(魚)」の方はいったいどこから来たのでしょう?
これに関してもはっきりしておらず、次のような様々な説があるようです。

- 黄道十二宮において、この時期に太陽が冬のサインである双魚宮から出るからという説。
- 四旬節の期間肉、卵、乳製品の摂取が禁じられ、魚を食べていたからという説。
- 4月になって暖かくなると魚(鯖)がたやすく簡単に釣られてしまう事から、4月1日に騙される人のことを
「四月の魚」とする説。
- この時期、魚の繁殖期で釣りが禁止されていたからという説。

この最後の説は11世紀末、グルノーブルの司教 Hugues ;ユーグが魚の産卵期に稚魚を保護する為
4月1日から6月30日まで釣りを禁止し、違反者は罰として、続く3回の日曜日に体の前と後ろに魚の絵をかけ、さらし者にされたことに由来します。
* グルノーブルの司教 Hugues ;ユーグ
グランド・シャルトリューズ修道院創設者の1人で、後に聖別され、聖ユーグとなる


これは「魚の絵を背中にくっつけるいたずら」を髣髴とされるお話で、4月1日が「聖ユーグの日」となっているところからもそのつながりを感じさせますね。


また「魚は多産・繁栄の印、またキリストの象徴でもあり、卵や鶏、羊やウサギと共に復活祭のお菓子に欠かせないモチーフの1つでした。
「アルザスでは魚の形に焼いた菓子を 復活祭の時と新年に贈り合う習慣があった」と言います。
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↑ スフレンナイムで買った陶器型


何故「新年と復活祭の時に贈り合うのか?」ということについては少し気になりますが
元々新年のお菓子で、1月1日が元旦とされる前にはそれまで新年初日だった復活祭に作られ、贈り合っていたのかも?と想像すると、ちょっと納得できそうな気もします(実際のところは不明)。


では、この他にポワソン・ダプリルのお菓子にはどの様なものがあるのでしょう。
この時期はPâques;パック(復活祭)のシーズンで元々チョコレート細工の卵やウサギ、そして魚も作られていますので、魚形のチョコがそのお菓子と言えるかもしれません。
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↑ オルレアンのショコラトリーに飾ってあった大きなチョコレート製の魚


しかし、一昔前は魚の形に焼いたパイ菓子がよく作られていました。

これは「わんだふるはうす」さんのサイトでも紹介されていて
魚の形のパイは『タルト・ポワッソン』とか『ポワッソン・フィユテ』と呼ばれています。1976年に来日したMOFパティシエ クロード・ボンテ氏が全国各地で講習会を行なって、日本に広まったお菓子
なのだそう。
* 同じサイトのこちらでは特注されたポワソン・ダブリルのお菓子がまとめら見られます。

子供の頃に買った今田美奈子さんの本「お菓子の手作り事典(1978年)」でも、ガレット・デ・ロワと一緒に
苺のポワソン・ダブリルが紹介されていましたが同じ頃ですね。


フェーヴについての本を出版しているHuguette Botellaさんから以前お聞きした話では、
彼女の幼少時代、4月1日のポワソン・ダブリルには魚形フェーヴが入った魚形のパイ菓子が販売されていたと言います。
* 厳密にはエピファニーのお菓子に入っているもの以外は「フェーヴ」と呼びません

このようにお菓子で王様を引き当てる遊びは、 なにもエピファニーに限ったことではなく様々な行事や
知り合いが集まった時など、 食事の際に行われるものでもありました。
フェーヴ製造者が新しい用途を開拓する為に作ったのか、或いはお菓子屋さんのアイディアに応えて作られたものかは定かではありませんが、エピファニー以外にもこれを使用したお菓子の販売が試みられた時期がありポワソン・ダブリルの魚フェーヴもその中の1つでした。
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↑ 現在でも販売されているスローガン入りの魚形フェーヴ


もうこれの入ったお菓子を作っているお店はなさそうと思っていたら、Charleville-Mézières;シャルルヴィル・メジエールにある知り合いのパン屋さんから「作っている(た)よ」と聞いてビックリ!(今は需要が無いので作ることもないようです)
彼の作っていたのはガレット・デ・ロワと同様のものを魚の形に成型したもので、Botellaさんが知っているのと同じでした。
* 因みにエピファニー以外に今でもフェーヴ状のものが使われているお菓子はPentecôte;パントコート(聖霊降臨祭)の「Colombier;コロンビエ」があります。


また、フランスでは20世紀初頭、行事毎に綺麗なポストカードを贈るのが流行り、
ポワソン・ダプリル用のカードも多く作られました。
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4月1日は愛と友情の記念日でもあり、魚が声を出さないことから、魚の絵のある匿名のカードを送ることは燃える思いを愛する人に告白する方法だったのだとか…。





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by Ethno-PATISSERIE | 2012-04-01 22:51 | キリスト教 行事 | Trackback | Comments(2)
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Commented by M at 2013-03-29 12:21 x
友達の子供がポワソン・ダブリルの日に大人の背中に魚の絵を描いて張るって言ってましたよ。これがイタズラなんでしょうねぇ。
ポワソン・ダブリルの魚フェーヴは、初めて見ました!
可愛いですね。タツまであるんだなぁ。
またまた、ポワソン・ダブリル用のカード、素敵です。
私は、フランス映画の葉書を集めてます。
フランスやヨーロッパの旅先でその土地の絵はがき買って集めてもいます。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-03-30 09:32
Mさん 魚のフェーヴはプロ向けの卸会社で今でも販売されているのですが、果たして実際に使っているお店はあるのか?とても気になります^^
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