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ニームのお菓子「 Le Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」

Croquant ; クロカン」は、「Croquet ;クロケ」, 「croquettes ;クロケット」等と共に、
ナッツ入りの固いビスキュイのことで、古くからフランス各地で様々なタイプのものが作られていました。
* 名前は動詞croquer;クロケ(カリカリかじる)に由来し、croquantの名はcroquerの形容詞と同じ。
biscuit croquant;ビスキュイ・クロカンというと、「カリカリしたビスキュイ」の意味になる。

ニームのお菓子「 Le Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」_b0189215_0452693.jpg最近では「Croquant ; クロカン」の名称が良く見かけられますが、
古い本で探すと、かつては「Croquet ;クロケ」という名前の方が多く見られたことが分かります。。
分かっているもので一番古いと思われるのは1642年の文献で
Croquet ;クロケ」でした。
粉、卵、アーモンドを使い、バニラかオレンジ花水で香りを付けたものだった
ということで現在のものと大差ないものだったことが分かります。

フランス各地のスペシャリテについて書かれた「Trésor gastronomique de France(1933年)
Curnonsky /Austin de Croze共著の中で、croquettes,croquets,croquantsの名前のついたスペシャリテは全部で20個。
そのうちcroquantsは「Croquants de Nîmes ;クロカン・ド・ニーム」の1つのみ。
これは「Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」のことです。
 
↓ コチラがクロカン・ヴィラレ
ニームのお菓子「 Le Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」_b0189215_1195961.jpg


Nîmes ;ニームのrue de la Madeleine(マドレーヌ通)に、同じGard県Lédignanから来たブーランジェClaude Villaret ;クロード・ヴィラレがパン屋を出したのが、今でも続くこの店の始まり。
* かつてrue de la Madeleineの1部はrue des Barquettesと呼ばれパン屋が多く集まっていた。
それは近くに粉を引く水車が多くあり、小麦粉が効率よく供給されていた為。


Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」はクロードの息子、Jules Villaret ;ジュール・ヴィラレ
よって1775年に考案されました。
ニームのお菓子「 Le Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」_b0189215_0514087.jpg
                            ↑ 現役で使われている古い窯


その経緯はこんなものだったと言います。
この頃、政府による通貨変更により1個6liards(=1sou et demi ;1スー半)だったPain au lait ;パン・オ・レをお客が2スーで支払った場合1/2スー硬貨が存在しなかった為、お釣りに困っていた。
そこでクロカンを作って、お釣り代わりこれをお客に渡した

* Liardはフランスの古い硬貨で、1lirad=4sous。最後に鋳造されたのは1792年。1856年まで流通していた。
フランス革命以前の貨幣制度では 1 Livre ; リーブル=20 Sous ;スー(Sol ;ソル)=80Liards ; リアル=240Denier ; ドゥニエ。

お釣りがお菓子だなんて、お客は皆納得していたのかちょっと気になりますが
よほど美味しかったのか、もしかしたら(良くある)単なる「お話」なのかもしれませんね。
それにしてもこのような問題は他のお店でもあったはずですが、どうしていたのでしょう?

三代目はクロードの孫で「Croquanet ;クロカネ」と呼ばれたPaul Villaret ;ポール・ヴィラレ
後を継ぎ、Coque;コックと呼ばれるブリオッシュやFougasette;フガセット、1つ前のブログで取り上げた
Minerve;ミネルヴ等も製造するようになり、商品が充実されました。

しかしその後1969年、店を地元企業のSociété Raymond-Geoffroyに売却されます。
ニームのお菓子「 Le Croquant Villaret ; クロカン・ヴィラレ」_b0189215_113969.jpg
↑ お店に飾ってあるポールさんの絵

* このポールさんが店を売却したとする記述もありますが、この企業のサイトには「1969年にクロカンヴィラレの秘密を手にする」というような内容の文章があり、ポールさんが亡くなったのは彼の肖像画に書かれているように1936年なので、辻褄が合いません。ヴィラレ家による店の経営は何代続いたのかは分からず。

さらに1987年にはRecolin Breydeが店を引き継ぎ、
2007年からは彼の孫Rémy Braydeが家族と共に店を切り盛りしています。


材料は「小麦粉、砂糖、アーモンド、レモン、オレンジ花水」で分量や作り方は秘密。非常に硬いのが特徴。
彼が店を継いだ当初は「クロカンが柔らかすぎる」と言いに来る常連客もいたのだとか…^^



※※※



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Maison Villaret
13 Rue de la Madeleine 30000, Nîmes
月~土; 7~19:30、日;8~19:30


* フォトグラファーのMichel Pradelにより1973年に撮影された写真では古い窯の様子が良く分かります。
サイト内の「Notre histoire」のページ内にあります

Commented by M at 2013-03-31 10:53 x
ナッツ入りの固いビスキュイって大好きです!
クロカンと言う名のお菓子がある事は知っていたのですが、
見た事も食べた事もなかったので気になってたんです。
地方菓子、特に南仏の方ではオレンジ花水ってよく、使われるんですねぇ。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-01 00:30
Mさん 初めてオレンジ花水で香り付けしたお菓子を食べた時はそれほど好きな香りではありませんでしたが、本物のオレンジの花の香りを知ってからは大好きになりました。これ無しには出来ないお菓子もあるくらいよく使われます^^
by Ethno-PATISSERIE | 2012-05-07 11:21 | ⑬Languedoc-Roussillo | Trackback | Comments(2)

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