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Pentecôte(聖霊降臨祭)のお菓子「Le Colombier ;コロンビエ」

Pentecôte ;パントコート(聖霊降臨祭)はキリスト教の典礼暦で祝われる移動祝日。
復活祭から数えて(復活祭当日を含む)50日目にあたり、今年(2012年)は5月27日がその日です。

復活したキリストが弟子たちに「近いうちに聖霊が降りる」ことを告げて天に昇り(キリスト昇天)
それから10日後、ユダヤ教の祭事暦で言う五旬節の日に集まっていた弟子たちのところに大音響と突風の
うちに約束の聖霊が炎のような「舌」の形で降りてきたといいます。
* 元々は春に得られる最初の収穫に感謝する農業祭であったものが、後になってキリスト教徒によって
聖霊降臨の出来事に結び付けられ、収穫感謝の意味はなくなる。

* 美術表現では使徒たちの上に聖霊の「白鳩」が下降すると共に頭上には「炎のような舌」が描かれる。
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↑ フィレンツェ ラウレンツィアーナ図書館 「ラブラ福音書」Evangéliaire de Rabula, vers 586 
こちらから借用


さてPentecôte ;パントコート(聖霊降臨祭)のお菓子「Le Colombier ;コロンビエ」のお話・・・。

実際にいつ頃から作られるようになったのかは不明ですが、このようなお菓子はかつてフランス各地で作られていました。
近代製菓概論と邦訳される「Traité de la Pâtisserie Moderne(Darenne et Duval) 」ではCharabot氏のルセットとして「アーモンドパウダー、砂糖、オレンジピール&ゼスト小麦粉、バター、卵白で作った生地を楕円形の型で焼き、表面をアプリコテし、フォンダンをかけ、砕いたピンクのプラリーヌをまぶしたもの」が紹介されています。
マルセイユのコロンビエにはこれにキルシュに漬けたムロン(メロン)コンフィが入っています。

19世紀末「Gâteau de la Paix ;ガトー・ドゥ・ラ・ペ」や「Gâteau Porte-bonheur ;ガトー・ポルト・ボヌール」という名前のお菓子が見られ、ガレット・デ・ロワのフェーヴ同様、Colombe ;コロンブが中に入っていました。
ガレット・デ・ロワのフェーヴ同様、中に小さな白鳩(Colombe ;コロンブ)を入れてくじ引きをするお菓子で
Qui la Colombe aura dans l’année se marira ;コロンブの入っていた者は一年以内に結婚する
と言われています。

Colombier ;コロンビエ」というのはフランス語で「鳩小屋」を意味し、「Colombe ;コロンブ」は
白い鳩」のこと。
平和の象徴、三位一体の「聖霊の象徴」でもあり、聖霊降臨等で主要なモチーフとなっています。

現在コロンビエはマルセイユのスペシャリテとして、聖霊降臨祭の前後一週間程の期間限定で買うことが出来ます。
そしてこの菓子の起源は、この町の創設者とされる「Gyptis ;ジプティスとProtis ;プロティス」の伝説にちなんだもの。

紀元前600年頃
この地にギリシャのフォカイア人船団が上陸し、ここを治めていたリグリア人部族セゴブリージュの首長ナンシスの元を訪問する。折しもこの日は首長の娘ジプティスの婿選びを行う日。慣例によって祝宴の際に彼女は自らの意思で将来の夫を選ぶことになっていたのであるが、彼女は訪問してきた初対面のフォカイア人プロティスを将来の夫に選び、この2人を中心にマルセイユの町の基礎が築かれた
というものです。

この伝説を元に、
この「祝宴の際にコロンブ入りのお菓子を切り分け、多くの求婚者の中からコロンブが当たったプロティスがジプティスの夫となった」というお話が創作され、パティシエたちがマルセイユのスペシャリテとして販売されるようになりました。

マルセイユの「Colombier ; コロンビエ」は1906年に行われたコンクールの際、マルセイユのパティシエによって考案されたものだといいます。

しかし、なぜこのような運試しを聖霊降臨祭の日に行うのでしょう?
コロンブがキリスト教では聖霊の象徴とされているので、聖霊降臨祭の日に食べるお菓子ということはしっくりきますが、なぜこれが「一年以内に結婚する人」を引き当てるお菓子とつながったのか? がちょっと謎に感じます。

さて、コロンビエの中に入っている陶器或いはプラスチック製のフィギュア、
これは本来フェーヴではなくコロンブといわれるべきものです。
* 厳密に言えばガレット・デ・ロワに入っている(入れられた)ものだけをフェーヴと呼ぶことが出来る
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↑ 左は大小のプラスチック製コロンブ、右3つは陶器製。

マルセイユのあるパン・菓子職人の組合Maison des Patissiersでは1997年に「LE COLOMBIER」を
商標登録しており、Marque déposéeの文字が入ったコロンブも作られています。
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↑ コロンビエ用に作られたコロンブ。組合で製造したもの。
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↑ 文字がつぶれて分かりにくいがMarque déposéeと書いてあるのが分かる


マルセイユのパティシエClaude Leonard氏はこのお菓子を買う時は「職人の手によって制作されたことを証明する紙のテープが巻いてあることをしっかり確認して買うこと」を勧めています。
恐らく組合に加入しているお店だけがこの紙のテープとコロンブを使用することが出来るのでしょう。


◎この動画(2008)ではマルセイユの人々でもこのお菓子の存在をあまり知らないことがわかります。

◎この動画(2009)に映っているお菓子に巻いてある紙がそれ。
お菓子の上にはフェーヴも乗せてあります。

◎この動画(2010)では制作風景を見ることが出来ます。
ここのお菓子にも同じ紙が巻いてあり、同じコロンブが使われています。



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by Ethno-PATISSERIE | 2012-05-24 19:07 | キリスト教 行事 | Trackback | Comments(4)
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Commented by M at 2013-04-18 12:33 x
コロンビエはシンプルな材料でできているのですね。
オレンジピールが入ってるとは、美味しそう!
マルセイユのは、キルシュに漬けたムロンコンフィが入ってるとは、珍しい!
鳩のコロンブ、初めて見ました。良いですね。可愛らしい。
このお菓子食べてみたいと思いました!
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-19 09:38
Mさん 鳩のモチーフって可愛いですよね♪もう長いこと、このお菓子を食べにマルセイユへ行きたいと思っているのですが、なかなか願いはかないません(涙)。
Commented by M at 2013-04-19 09:50 x
そうですよね。日本からフランスへ行くと必ずパリには降り立つけれど、地方へ行くとなると時間もかかりますし、ある程度の滞在期間も必要となりますしね。特に南仏マルセイユとなると・・・。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-20 08:33
Mさん 期間限定なので、さらに行ける可能性も低くなってしまいます><
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