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La Navette arbigeoise ;ナヴェット・アルビジョワーズ

Navette;ナヴェットというと、まず思い浮かぶのはプロヴァンス地方でよく見られるオレンジ花水で
香り付けをした、小舟形で縦に切り込みを入れた焼き菓子ではないでしょうか。
Midi-Pyrénées ;ミディ・ピレネー地方圏Tarn ;タルヌ県の県庁所在地、Albi ;アルビにも
Navette arbigeoise ;ナヴェット・アルビジョワーズ」と呼ばれるお菓子があって
町のスペシャリテの1つとなっています。

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↑ Pâtisserie Galyのナヴェット(真ん中)      ↑ Michel Belinのナヴェット
* Pâtisserie Galyは現在「Au Fournil d'Ernest et Juliette」に代替わりしている。

Pâte sablée ;パート・サブレを紡錘形に成型し、表面にホールのアーモンドを飾って焼いたお菓子で
生地にフリュイ・コンフィを混ぜ、オレンジ花水で香りをつけたりと、お店によって多少バリエーションは
ありますがプロヴァンスのものとは異なり、切り込みは入っていません。

プロヴァンスのナヴェットが「小舟」をイメージしているのに対し、こちらは「糸巻き棒」をモチーフにしたものなのだとか。(だから切り込みが無い?^^)

これは11-12世紀頃にこの地方で活動していたCathares(カタリ派;アルビジョワ派、アルビ派とも
呼ばれた)がquenouille;クヌイユ(糸巻き棒)やnavette de tisserands ;ナヴェット・ドゥ・ティスラン
(機織の杼)をシンボルの1つとしていたことに由来しているのだそうです。
* この地方は繊維産業が盛んで織工が多く、彼らの間でカタリ派の教義が広まっていた。
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↑ La Fileuse(一部) ; William-Adolphe Bouguereau (1825–1905) Public domain
左手で抱えている棒がquenouille

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↑ こちらが古いnavette de tisserands ;ナヴェット・ドゥ・ティスラン(機織の杼)



アルビのナヴェット」という名前ではありますが、タルヌ県内の他の地域でも作られています。
Rabastens ;ラバスタンと言う町の「Pâtisserie Rivières ;パティスリー・リヴィエール」で
作られているナヴェットは、アルビのそれとは少し違うものでした。
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↑ その名は「navette tarnaise;ナヴェット・タルネーズ(タルヌ県のナヴェット)」
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↑ サイズは大きめの3種類

雑誌で見つけた、そのちょっと異なるナヴェットを食べたくってRabastens へGo!
* Toulouse ;トゥールーズからGaillac ;ガイヤックまで電車で50分、更にバスで20分♪

小さな町のお菓子屋さんではありましたが、美しくてクオリティーの高いお菓子が並んでいました♥

お店のご主人が奥にある広いラボで、実際にナヴェットの成形を実演してくださいました♪
型抜きしているのではなく、丸めた生地からあっと言う間に同じ大きさ&形に成形していく姿は
まさしくプロの技。
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これにアーモンドスライスと砂糖を振って焼けば出来あがりです。
生地はPâte sabléeと同じようなもので細かく刻んだraisins secs(レーズン)とbigarreaux confits
(ドレンチェリー)が入っており、香りつけにはオレンジ花水ではなく、乾燥させたオレンジの皮とバニラの鞘(使った後の鞘を再利用)を細かい粉にしたものを使っているため、とても自然で上品な香りがします。
アルビで買ったナヴェットは生地が厚めで外側はサクッ、中はフワッとした感じでこれも美味しかったのです
が、こちらは全体的にサクッとした食感。形も味も洗練されている印象でした♪


この菓子の起源については、はっきりしていません。
ナヴェット形に成形するお菓子は古くからあったようですが、19世紀中頃以前の本でナヴェットと言う名前の
お菓子は今のところ見つけられず・・・。


L’inventaire du patrimoine culinaire de la France Midi-Pyrénées」の中では
Albi ;アルビのスペシャリテと言うだけではなく、Nantes ;ナント、Orléans ;オルレアン、Marseille ;
マルセイユ、Castelnaudary ;カステルノーダリーの町でもスペシャリテでもあったと書かれています。

しかし、現在でもスペシャリテとして残っているのはマルセイユをはじめとするプロヴァンス地方と
このアルビを中心とする地域を含む(革命以前の州としての)ラングドックではないでしょうか。

19世紀末から20世紀前半に出版された本の中には他にも
Navettes aux amandes(アーモンド入りナヴェット)」や「Navettes d’Italie (イタリアのナヴェット)」「Navettes d’Espagne(スペインのナヴェット)」という名前もありましたが、
地名が付いたものは「Navettes d’Orléans(オルレアンのナヴェット)」しか見つけることは
出来ず・・・。

*とはいえ、 フランス各地のスペシャリテについて書かれた「Trésor gastronomique de France(Curnonsky /Austin de Croze共著1933年)」の中にはAlbiの他にCastelnaudaryでもスペシャリテとしてナヴェットは記載されている。

*いずれもオレンジ花水やレモンのゼストで香り付けした生地を小さなナヴェット形に成型し、縦方向に切り込みを入れて焼いたお菓子だが、Navettes d’Italieは発酵生地で作られ、Navettes d’Orléansには重曹が使われているという違いがある。
* 「Le Mémorial historique et géographique de la Pâtisserie(Pierre Lacam 1908)」の中では、Navettes d’ItalieとNavettes d’Espagneはナヴェット形の両端に小さく丸い頭が出来るように成形してありこれはかつてスペインとのつながりがあったフランスの北部やベルギーでクリスマス前の時期に見られるcoquilleやcougnouの形を想起させる。


さて、アルビでこの菓子が作られるようになったのはいつのことだったのでしょう?
カタリ派の時代だという説もありますが、一般には18世紀だと言われています。
*因みにマルセイユにある「Four des Navettes ;フール・デ・ナヴェット」のナヴェットが考案されたのは
店の創業と同じ1781年。


記述として残っているのは1913年に出版されたアルビ地方の料理本
La vie provinciale. Au pays de Cocagne(Louis Rieux)」で、生地には刻んだcédrat confitが
入っているものでした。

Pâtisserie Rivièresの店主で4代目のGuy Rivières氏によれば
店が創業した1894年からすでに作っていたということですので、19世末にはもう作られていたことになりますね。
このことから想像するに18世紀からあったかどうかは分かりませんが、19世紀中頃にはあったかも?

* Pâtisserie Rivièresを訪れたのは今から10年前の2002年7月のこと。
Guy Rivières氏はすでに引退し、残念ながらお店は違う人の手に渡っているもよう。
同じナヴェットが作られているかどうかは不明。




※※※



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by Ethno-PATISSERIE | 2012-08-12 00:04 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(2)
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Commented by M at 2013-04-04 15:39 x
最後のナヴェット、作り方と成形を見てたらもの凄く食べたくなりました。
レーズン、ドレンチェリー、乾燥させたオレンジの皮っていいですね。
サクッとした食感、味わいたいです!形もかわいいなぁ〜。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-05 11:04
Mさん 香料無しで、自然なものだけを使っているところがいいのですよね。こ誰が食べても美味しいと思って頂けると思います。今でも同じものが作られていると良いのですが。
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