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幻の「La Brioche aux Pruneaux ;ブリオッシュ・オ・プリュノー」

8月15日。皆さんご存じの通り、日本では月遅れのお盆、第2次世界大戦終戦記念日でもあります。

カトリック教会では「Assomption ;アソンプション(聖母マリア被昇天の祝日)」。
この日に食べるお菓子は特にありませんが、ブルゴーニュの小さな町La Clayette ;ラ・クレットでは、
かつてこの日に「Brioche aux Pruneaux ;ブリオッシュ・オ・プリュノー」を食べる習慣がありました。
* Saône-et-Loire ;ソーヌ・エ・ロワール県の南西部、Macôn ;マコンの西60kmの所に位置する。
* La Clayette 本来ならばラ・クレイエットと発音するが、ここでは例外的にラ・クレットと発音される。

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↑ Château de la Clayette(建築開始は14世紀。個人所有)

この菓子は「L’inventaire du patrimoine culinaire de la France ;Bourgogne(1999)」と言う本の中で見つけました。
説明では「Bernard Dufoux ;ベルナール・デュフー氏のお店でのみ作られている」と書いてあります。
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↑ 小さい町にあるお店にもかかわらずチョコを求めて大勢のお客が訪れる

それで2003年彼のお店を取材させて頂いた際、このお菓子のことを尋ねてみると
8月15日に毎年楽しみにしている年配のお客様の要望で15個程作っている
とのお返事。いつか食べに来たいと思っていたのでした。

ところがその後、Dufoux氏と日本からのやり取りの中で現在はなんと作っていないことが判明!
しかもルセットは秘密。具体的なお菓子のイメージも分からず、幻のお菓子となってしまい、
毎年この日になると「どんなお菓子だったのか?」が気になって仕方がない状態がぶり返します^^。

その後の調べでは
かつてこの町ではこの日「Foire aux pruneaux et aux melon(プリュノー&メロン市)」が行われ、
パン屋&お菓子屋が「Brioche aux Pruneaux(プリュノー入りブリオッシュ)」を作って販売していたことが分かりました。
* この習慣が始まったのは20世紀初め頃だと言われている。
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↑ Dufouxさんお決まりのポーズ♪お店の奥にあるこのスペースでは見学用にビデオも用意されている

やがて作るのはDufoux氏だけに・・・。
* もしかしたら「プリュノー&メロン市」が無くなったことが原因で作られなくなったのかも?

Dufoux氏がこの町にお店を開いたのは1960年、当初はパティスリー・ショコラトリーでした。

リヨンのベルナションで修業をしたDufoux氏はその後ショコラティエとして専念することを決意し、
1988年ショコラトリーに変更。
この時からパティスリーは一切作らなくなりましたが、それに伴いBrioche aux Pruneauxの製造も
行われなくなったということでした。

私が訪れた際このお菓子のことを知っている人に出会わなかったのは、年に一度の製造をやめてから
15年も経っていたことと、少数の年配者だけがこの菓子を愛好していたことが原因だったのでしょう。

お菓子の具体的な姿が分からなかったので今まで作ったことはありませんでしたが、
今年は想像を働かせながら作ってみることに・・・。

ブリオッシュ生地を25×15cm、5mm厚に成形し、上に卵・牛乳・砂糖・小麦粉を混ぜたものを薄く塗り、種を取ったPruneaux d’Agen ;プリュノー・ダジャンを表面に乗せて焼く」と言うのが大まかな作り方。
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生地を厚みの薄い長方形に成形するのが難しく、プリュノーを固定するためのアパレイユも配合が分からないので適当に混ぜて固さで判断。
プリュノーはホールだと全体に散らしにくいので1/4にカット。
薄く伸ばして沢山ピケしたつもりでしたが、やっぱり不均一に発酵して焼き上がりは平らではなく
多少こんもりとして、あまり美しくない出来上がりに…(涙)。
とは言え、プリュノーの軽い酸味のある味とアパレイユ&ブリオッシュの歯応えの違いもあって、非常に美味でした♪
*ブリオッシュをもっと薄くすると更に美味しくて、見た目も良くなり私好みになりそう。ただしそれが正解なのかは不明。

「foire aux pruneaux et aux melonがいつから始まり、いつ終わったのか?」「どんなお菓子だったのか?」はまだ分からないまま…。
恐らくそのあたりを知っているのはDufoux氏のみだと思われますが、なにぶん現在78歳。
まだまだお元気だとはいえ、このブリオッシュについてまたお会いしてお教え頂ける機会は果たしてあるのでしょうか?



                       ※※※


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Commented by chihiring at 2012-08-17 09:27
再現お菓子、とっても美味しそうです~! 
ブリオッシュにカスタードのようなものがのっていて、プリュノーがのっている感じなのかな?
いつか、Dufoux氏にお伺いできるといいですね~ 
ほんとにいつもブログを拝見すると、フランスのお菓子の歴史、深さに、そして地方のゆったりとした雰囲気にひきこまれます~ 
地方菓子の本ができあがったら素敵だなぁと思うのです!!
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2012-08-17 11:45
>chihiさま、コメントありがとうございます。
ただ混ぜただけのアパレイユ生地なのでカスタードっぽくはないのです^^甘めにしてアルマニャックやラムで香り付けすれば、美味しさup♪何年たっても実物に行きつけないのがもどかしいです。
地方やテーマを絞って書かないとなかなか本まではたどり着けそうにありませんね^^;でもやっぱり本になるといいな~(自分もそう言う本が欲しい!)。
Commented by chihiring at 2012-08-17 20:10
アルマニャックの香りとか合いそうですね!
ふふ、Ethno-PATISSERIEさんの一番好きな地方からまずはテーマにしてみるのはどうでしょう!
私、かなり読みたいのです(笑)
何かのお手伝いができたらいいな。 いつか、そんな本ができたらいいですね!夢広がりますね~
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2012-08-17 21:44
>chihiさま ありがとう~♪
日本ではMidi-Pyrenees地方のお菓子にあまりスポットが当たっていないようなので、ブログ上では当分この地方を取り上げていこうかなぁと思います。(気が多いのでコレ ↑ みたいにすぐ浮気しちゃいそうですけど・・・^^)
Commented by M at 2013-04-09 09:59 x
パティシエさんの笑顔がいいですねぇ。美味しいんでしょうね。
ブリオッシュ・オ・プリュノー、食べてみたいです!
ここのショコラはどんなかな?これまた、食べてみたい!
roiboitさんの凄い美味しそうだなぁ〜。いつも美味しいそうなの作られてますねぇ。
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-04-09 19:27
Mさん 本物のブリオッシュ・オ・プリュノーを食べてみたいですね。
ここのショコラ、特に色々なドライフルーツの沢山のった板チョコが大好きでした。LyonやChalon sur Saôneにも支店がありますし、パリのA l’Etoile d’Orにも置いていたと思いますので、機会がありましたらお試しください^^
Commented by M at 2013-08-15 09:44 x
この回でしたね。忘れていました!
Assomption の日にブリオッシュ・オ・プリュノーを食べる習慣があったんですね。
今日は La Clayetteで 食べる人がいるだろうか?
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2013-08-16 15:09
Mさん お店では作られなくなってしまいましたので、本物をご存じのどなたかが自作くだされば嬉しいです。
Commented by M at 2021-08-15 19:19 x
思い出深いので、思わず、コメントしました!
今、ブルーンやプラムの季節で、食べてくなります。
ブリオッシュ・オ・プリュノー。

三つ編みのデニスさんのお店も教えて貰って!
懐かしいいです!
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2021-09-04 06:45
> Mさん、コメントありがとうございます。
返信が遅くなり申し訳ありません。
ブログのチェックを怠っておりました。

最後まで本物の『ブリオッシュ・オ・プリュノー』には出会えないまま、本当の幻になってしまい心残りです。
by Ethno-PATISSERIE | 2012-08-16 20:18 | ⑤Bourgogne | Trackback | Comments(10)

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