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「Crêmet d’Anjou ;クレメ・ダンジュー」 その① 歴史について

Crêmet d’Anjou ;クレメ・ダンジュー」はPays de la Loire地方圏Maine-et-Loire県のスペシャリテ。
Fontainebleau ;フォンテーヌブロー等と同様フロマージュの1種。主にFromagerie ;フロマジュリー(チーズ屋)やCrémerie ;クレムリー(乳製品を扱う店)で扱われるものです。
* Anjou ;アンジューはフランス革命以前に使われたAncienne province(旧州名/旧地方名)のこと。
現在の県にほぼ一致している。中心都市はAngers ;アンジェ。

クレメ・ダンジューは泡立てた生クリームに泡立てた卵白を混ぜ、1人分ずつ水切りして作られるデザート。
(フロマージュ・ブランは使わないのが基本の作り方)
上から生クリームと砂糖をかけて、或いは赤いベリーのクーリをかけて食べられます。
1年中ありますが、赤いベリー類が採れる春から夏にかけてのシーズンに多く作られます。
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アンジェのサイトAngers.frにはその歴史が詳しく紹介されていました。
18世紀にはあったことが分かっており、市の古文書では1702年、続いて1704年に納入された食事の中に
初めてこのデザートが記録されているそうです。
その当時は「fromege de crème ;フロマージュ・ドゥ・クレーム」と呼ばれていたとか。

Crêmet ;クレメ」という名称が古文書の中で見られるようになったのは1741-1743年。1767-1779年には市当局から提供された宴会で定期的にクレメが出されていたそうですが、その後廃れてしまいました。


さて、18世紀後半に廃れてしまったクレメですが次に現れたのは1世紀後、偶然の出来事から・・・。
大きなお屋敷の女料理人Marie Renéaume ;マリー・ルネオムは1890年のある夜、デザートが足りない
ことに気付いた。機転を利かせて残っていた生クリームに泡立てた卵白を混ぜ、型代わりにポルト用のグラスに詰め、これを器に取り出してから表面に生クリームをかけバニラシュガーを振りかけた。


1898年1月10日、André Girault ;アンドレ・ジローと結婚したマリーは、1901年アンジェの2 rue Saint-Julienにあったバターや卵等、乳製品を販売するCrémerie David ;クレムリー・ダヴィッドを買い取り、
本格的にクレメを販売し始めます。
店で個人向けに販売するほか、レストランにも卸される他、女性たちによる移動販売も行われて大流行したとか。
* こちらのサイトではマリーのポートレートとお店の写真を掲載。
*こちらのサイトでは1918年に撮影された移動販売の写真を掲載。

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↑ こちらは古いハート形のクレメ型。いつから?、そして誰が?使い始めたのかは不明

アンジェ生まれの美食家、Curnonsky ;キュルノンスキー(本名;Maurice-Edmond SAILLAND ;モーリス・エドモン・サイアン)は著書「La France gastronomique, guide des merveilles culinaires et des bonnes auberges françaises. L'Anjou(1921)」の中で
アンジュー地方のクレメは神々のご馳走である。この地方の伝統のルセットで、残念なことに数人の農民たちの間で秘密にされている。どんなクレーム・シャンティーも、香り高くなめらかで軽いこの泡々とは比べものにならない」と絶賛しています。

人気が出ると真似をして販売する人が増えてくるのは世の常のようで、アンジェのブーランジェ・パティシエ
Louis Fouquet ;ルイ・フーケ(95,route de Paris)は1910年「Crêmets des ducs d’Anjou ;クレメ・デ・デュック・ダンジュー」の商標登録までしたのだとか(Girault  夫妻は商標登録をしていなかった)。

1923年になるとジロー 夫妻は徐々に商売を縮小し、クレメの製造も途絶えました。
真似して製造していたところも多かったクレメですが、デリケートで遠くへの輸送も困難だった為に、製造する人も徐々に少なくなっていった模様。

数は減ったものの今でもスペシャリテとして作り続けられていて、私が初めて食べたのは1991年Angers ;アンジェへ行った時。市場のフロマジュリーで見つけることが出来ました。
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↑ この白っぽくてわけのわからない写真(恥)が市場で買った初めてのクレメ

現在レストランのデザートとして食べられるお店も数件ありますが、生クリームと卵白だけで作られているのかな。


その②へ続く・・・


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Commented by M at 2014-08-04 11:15 x
クレメ・ダンジュー、ちょうど友達が週末に作ったとメールで来て、食べたいなぁと思っていたんですよね。
友達のは、クレメが手に入らないから、水切りヨーグルトで代用したそうです。赤いベリー、フランボワーズ、クランベリーでソースを作ったそうです!
ヘェ!クレメの型なんてあるの知りませんせんでした。
roiboitさんのクレメ・ダンジューは、ブルーベリーが添えられてシックな感じで、美味しそうですね。
ブルーベリーは、ご自宅の庭からの物ですか?
貴重なアンジェのマルシェで買われたクレメ、食べたいです
クレメ・ダンジューのお話、興味深く読みました。
その②も楽しみにしております!
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2014-08-05 08:52
Mさん いつもコメントありがとうございます!
本物の美味しい生クリームと卵白があれば、気軽に出来るのがクレメ。冷蔵庫のある現在は多少フレッシュさは保てると思いますが、やっぱり出来てすぐの方がより美味しく感じます。
水切りしたヨーグルトならよりヘルシーでお腹にもやさしいクレメになりますね。
ブルーベリー、そうです^^庭で採れた完熟。冷やしてそのまま添えただけで充分美味しいデザートになりました♪
by Ethno-PATISSERIE | 2014-08-04 10:42 | ⑱Pays de la Loire | Trackback | Comments(2)

<仏蘭西菓子研究所>フランス地方菓子&行事菓子 ガトーデロワ&フェーヴ *by roiboit*


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