カテゴリ:⑯Midi-Pyrenees( 8 )

fouace ;フアス似の「Gâteau de la Mariée ;ガトー・ドゥ・ラ・マリエ」

Gâteau de la Mariée ;ガトー・ドゥ・ラ・マリエ』は、Aveyron ;アヴェロン県Laissac ;レサックのスペシャリテです。
おそらくフランスでもこの辺りでしか知られていないであろうお菓子…。
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レサックは電車も通っておらず、バスも1日数本しか通っていないようなとても小さな町ながら、
毎週火曜の午前中に行われる家畜市はフランスで第2位の規模を誇り、その起源は15世紀初めに遡るという
アヴェロン県で一番最初に家畜市が行われた町でもあります。


以前フランスの食雑誌「Saveurs」にこの菓子が紹介されて以来、いつか行ってみたいと
思っていたお店でした。
2002年にこの地方を周る旅の計画を立てた時、お店にコンタクトを取ったところ快い返事を頂き、
どんなに嬉しかったことか♪
相手の都合に合わせての訪問だった為、滞在していたRodez ;ロデズからはバスではなく
タクシーでお店へ…(タクシーの運転手さんとの会話も楽しみ。いつも沢山の情報をいただけます^^)
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↑ 石造りの素敵な外観。

相手をしてくださったのはLaurence Roques;ロランス・ロックさん。妹のMartine;マルティーヌ と共に2つの店を切り盛りしています。
彼女たちの祖父母(Elie Roqueと妻でMeunier(製粉業者)を父に持つLouise Bru夫妻)が
1930年、このお店を始めたました。

店内には様々な形のpains au levainや大きく焼いた切り売りのタルト、シュー菓子等が並び、ひっきりなしにお客が買いに来る人気店で、ゆっくり話をする時間が取れないほど。
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↑ アプリコットぎっしりのタルト。切り売り。


ガトー・ドゥ・ラ・マリエ」は「fouace ;フアス」に似た生地を長方形のオーブンプレート一杯に
ドーナッツ形に成形して焼いてあり、量り売りされていました。

この菓子が誕生したのは、夫が戦争の為この地を離れ二代目のLouise Roques ;ルイーズ・ロック
1人で店を守っていた時のこと。
物の無い時期で材料も限られていた中、ある日結婚式のお菓子の注文が入り工夫して作ったのが始まりで、
最初は『fouace de la Mariée ;フアス・ドゥ・ラ・マリエ』と名付けられたと言います。

飾り気のない菓子ですが、ルイーズの夫が元々Dragées ;ドラジェを作る職人だったことから、結婚式用にとお菓子をドラジェで飾り付けたとのお話。で、実際に飾り付けて見せてくれました♪
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↑ ドラジェで飾った『ガトー・ドゥ・ラ・マリエ』

フアス同様こちらもオレンジフラワーウオーターで香り付けしてあってほとんど変わらないように感じますが、パン酵母は使われていないところが大きな違い。
甘味は強くなく、一緒に売っているフアスよりも柔らかい感じでした。


ロランスさんはあまり話す時間が取れなかったので、近所にある小さなMusée du Laissaguais(民俗博物館)のMaurice Gauffre氏をお店に呼んで下さり、この地方のお菓子についての話をお聞きしました。


この町には古いfour banal(共同の窯)も残っているのだとか。かつて3つの水車があってそこでは粉や油(胡桃)が作られいたそう。
かつてはこの辺りにもアーモンドの木が育てられていたという話なども…。

午後からは博物館を見学。
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↑ Musée du Laissaguais内、暖炉を再現したコーナー。
左端にはGâteau à la broche用の型やゴーフリエも。

私の大好きな昔の生活道具が沢山展示してあり、直々に解説して頂くことも出来てとても有意義な時間だったのでした♪



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by Ethno-PATISSERIE | 2015-08-02 15:38 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(3)

Aveyron ;アヴェロン県の発酵菓子「fouace ;フアス」

fouace ;フアス』はAveyron ;アヴェロン県のスペシャリテで主に王冠形に作られ、
オレンジフラワーウォーターがしっかり香る発酵菓子。
パン生地に卵やバター等の材料を加えて作られた他の発酵生地同様、家族のお祝い事や祝祭時に
作られていたもので、現在では主に朝食やおやつとして食べられています。
パン屋さんやマルシェには大小様々な「fouace ;フアス」が並び、大きなものは好きな量だけ
量り売りしてくれ、地方や店によって特徴的な形をしていてワクワクします^^
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↑ fouace au levain de la Boulangerie Roques(Laissac)

fouaceの語は、7世紀に灰の中で焼いたパンを意味するラテン語「Focacius panis」に由来する俗ラテン語『focacia』から来た言葉。
フランスのみならず、イタリア語focaccia,スペイン語hogaza,ポルトガル語fogaça,ハンガリー語pogácsa等々、ヨーロッパ各地にこの語を語源に持つ語が存在しています。

また、このアヴェロン県のfouaceの他にフランス国内でもfougassefouée等々の似た名前を持つ菓子が
あり、地域ごとに特徴的な形・味のものがあり、それを探し歩くのはとても興味深い♪
* 日本でなじみ深いのは、プロヴァンス地方で作られる塩味のfougasse ;フガスでしょう。


元々パンから派生し、各地で独自に変化していった甘味&塩味のフアス&フガスたち。
中世からフランスの各地方で作られていたことが知られています。
Fernanc Molinierは著書「Promenade Culinaire en Occitanie(1973)」の中で、
1390年2月24日付けのCommandrie de Saint-André de Gaillacの規約と習慣についてロマンス語で書かれた手書き文書で、コマンドリー・メンバーにLe dimanche des Rameaux ;ディマンシュ・デ・ラモー(枝の主日)用として昼食と夕食に出される食材と共に「テーブルにfougasse ;フガス一切れとワインを置く」と書かれていることを引用しています。
* Commandrie ;コマンドリーとは中世、キリスト教騎士修道会が所有した地所、及び修道士、騎士とその関係者たちが暮らし、訓練する場のこと。
* Le dimanche des Rameaux ;ディマンシュ・デ・ラモー(枝の主日)についてはこちらをご参照ください。 
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↑ Fouace campagnarde d'Entraygue(Entraygueのマルシェで出会った田舎風フアス)


彼は同様に1593年の文書でラングドック州議会がアルビで開いた会議の際、アルビの町は議会のメンバーに「ローズ・ウォーターで香り付けしたfougassets(小さなフガス)を9ダース半とその他のお菓子をガイヤック・ワインと共に贈った」ことも引用しています。

いずれも現在のアヴェロン県の南隣に位置するタルヌ県辺りのことですが、
この辺りではこのころ既にデザートとしての甘いフガス(フアス)が作られていたことが分かります。


私が初めて出会ったのは(確か)1992年のこと。
Laguiole ;ライオルの町で1858年の創業以来ルセットを五代にわたって受け継ぐBoulangerie Rouxの、上に可愛いシニオンがのった『fouace de Laguiole;フアス・ドゥ・ライオル』でした。
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2002年、アヴェロン県を周った際にも様々に特徴的なフアスに出会うことができましたよ♪

現地では『fouace ;フアス』の名前が使われていますが「L’inventaire du patrimoine culinaire de la France ; Midi-Pyrénée版(1996)」では「fougasse aveyronnaise ;フガス・アヴェロネーズ(アヴェロン県のフガス)」として紹介されていて、少し不思議に感じました。
ポストカードにも稀に「fougasse」と書かれているものがあって、お店の人にも尋ねてみたのですが残念ながら「fougasseと呼ぶことは無いけど、そう書いてるものもあるわね」という返事しか聞くことができませんでした。

アヴェロン県の俚言では『fougásso又はfouásso』という名前でした。
なるほど「G」入り、無しの両方が使われていたのですね。

ではなぜ今は「G」無しの「fouace」となっているのでしょう?

あくまでも個人的な想像ですが「fougasse aveyronnaise」という書き方は、より一般的で認知度のある「fougasse」という名前に「aveyronnaise(アヴェロン県の) 」という形容詞を付けて、プロヴァンス地方のフガスとは違うものであることを強調し、また、実際に呼ぶ際は長すぎますし、区別する為にあえて「fouace」という名前を使うようになったのではないかな?と思いました。

フランス各地のスペシャリテについて書かれたCurnonskyとAustin de CROZE共著「Trésor gastronomique de France(1933)」の中にはfouaceやfougasseも掲載されていますが、
この地方のスペシャリテとしては『fougasse d’Espalion』の名前が挙げられていました。
このころは「fougasse」の名前も一般的に使われていたのでしょうか?
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↑ Fouace d'Espalion

いつごろから「fouace」の名前が使われるようになったのかは残念ながらよく分かりませんでしたが、
もう少し時間をかけて調べてみたいと思います♪



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by Ethno-PATISSERIE | 2015-07-29 11:00 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(2)

La Rissole aux pruneaux ; リッソル・オ・プリュノー

Rissoles ;リッソル 』には大きく分けて塩味・甘味の2種類があり、
前者はアントレやオードブルに、後者はデザートやおやつとして食べられています。
中世に遡ることが出来るほど古くからあり、かつてはフランス各地で様々なタイプのリッソルが作られ
ていました。
現在ではサヴォア地方を中心にいくつかの地方、町で作られ、スペシャリテとなっています。


Midi-Pyrénées ;ミディ・ピレネー地方Aveyron ;アヴェロン県のスペシャリテと言われて思い浮かぶお菓子の1つが「Rissole aux pruneaux ;リッソル・オ・プリュノー」。
甘いプリュノー入りがスタンダードで、県内(特に北西部)のブーランジュリー・パティスリーで見られる
かなりポピュラーなお菓子です。
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             ↑ Villefranche de Rouergue,Rodez,Entraygueで出会ったリッソル

L’inventaire du patrimoine culinaire de la France Midi-Pyrénées(1996)」によると、
アヴェロン県でリッソルが作られるようになったのはそれほど古くなく、20世紀以前に遡ることは出来ないだろうと書かれています。
それが徐々に知られるようになり、1950年代にはその名声が隣接するラングドック・ルシヨン地方のモンペリエまで達していたのだとか。
(周辺の地方ではもっと以前から作られていることが分かっています。アヴェロン県でも文献の中で見つかっていないだけで、作られていたかもしれませんね^^)


このRissole aux pruneauxのガルニは、紅茶で戻したプリュノーの種を外し、砂糖と一緒に粗くつぶしたもの。
Pâte brisée(ブリゼ生地)を薄く伸ばして円形に型抜きし、ガルニを乗せて半円に折り、ドレをしてオーブンで焼きます。
シンプルなお菓子なだけに、お店によって形や色、味も微妙に違って面白い!
* パイ生地の使用は稀で、油で揚げたものはあまり見かけない。
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           ↑ Espalion,Boulangerie-Pâtisserie Majorelのリッソル&断面

実はこの地方のスペシャリテであるリッソルには他に塩味バージョンの「Rissole à la viande ;リッソル・ア・ラ・ヴィアンド」もあるのだとか…。
でもこの地方を旅した際(初夏と秋)には見つけることが出来ませんでした。
なぜか?というと、元々これがCarnaval(カーニヴァル、謝肉祭)の時期に食べるものだったから^^

かつてはその後に続く四旬節には節制期間でを避けるべき肉の代わりにプリュノーを入れたリッソルを作って食べられていました。
そのことから、肉入りを「Rissole gras ;リッソル・グラ(脂っこい=肉入り リッソル)」、
プリュノー入りを「Rissole maigre(脂肪のない=肉の入っていない リッソル)」という
呼び方もありました。


さて、その塩味リッソルとはどんなものか?と言うと、小さく刻み、火を通したブタ肉を詰めたものでした。
Rieupeyroux ;リュペイルーと言う町ではLundi Gras ;ランディ・グラの日に「Fête de la rissole(リッソル祭)」が行われ、この塩味リッソルとプリュノー入りの2種類が沢山販売されます。
* 「Lundi Gras ;ランディ・グラ」はカーニヴァル期間の最終日である「Mardi gras ;マルディ・グラ」前日、月曜のこと。マルディ・グラ翌日の「 Mercredi des Cendres(灰の水曜日)」からキリスト教徒の節制期間である「Carême ;カレーム(四旬節)」が始まる。四旬節は灰の水曜日から復活祭の前日までの40日間(日曜日を除く)

そしてかつてここではこの日「男性はミモザの花、娘はリッソル」を好きな人に渡すという習慣があり、
好きな人と交換することが出来れば両思いであると、愛を確認できる日でもあったとか。

現在ではプリュノー入りのリッソルだけが一年を通して作られていて、もう片方は一般的に限られた期間
少しだけしか見られないようですが、いつか食べてみたいものです^^♪



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by Ethno-PATISSERIE | 2012-09-15 17:43 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(2)

La Navette arbigeoise ;ナヴェット・アルビジョワーズ

Navette;ナヴェットというと、まず思い浮かぶのはプロヴァンス地方でよく見られるオレンジ花水で
香り付けをした、小舟形で縦に切り込みを入れた焼き菓子ではないでしょうか。
Midi-Pyrénées ;ミディ・ピレネー地方圏Tarn ;タルヌ県の県庁所在地、Albi ;アルビにも
Navette arbigeoise ;ナヴェット・アルビジョワーズ」と呼ばれるお菓子があって
町のスペシャリテの1つとなっています。

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↑ Pâtisserie Galyのナヴェット(真ん中)      ↑ Michel Belinのナヴェット
* Pâtisserie Galyは現在「Au Fournil d'Ernest et Juliette」に代替わりしている。

Pâte sablée ;パート・サブレを紡錘形に成型し、表面にホールのアーモンドを飾って焼いたお菓子で
生地にフリュイ・コンフィを混ぜ、オレンジ花水で香りをつけたりと、お店によって多少バリエーションは
ありますがプロヴァンスのものとは異なり、切り込みは入っていません。

プロヴァンスのナヴェットが「小舟」をイメージしているのに対し、こちらは「糸巻き棒」をモチーフにしたものなのだとか。(だから切り込みが無い?^^)

これは11-12世紀頃にこの地方で活動していたCathares(カタリ派;アルビジョワ派、アルビ派とも
呼ばれた)がquenouille;クヌイユ(糸巻き棒)やnavette de tisserands ;ナヴェット・ドゥ・ティスラン
(機織の杼)をシンボルの1つとしていたことに由来しているのだそうです。
* この地方は繊維産業が盛んで織工が多く、彼らの間でカタリ派の教義が広まっていた。
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↑ La Fileuse(一部) ; William-Adolphe Bouguereau (1825–1905) Public domain
左手で抱えている棒がquenouille

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↑ こちらが古いnavette de tisserands ;ナヴェット・ドゥ・ティスラン(機織の杼)



アルビのナヴェット」という名前ではありますが、タルヌ県内の他の地域でも作られています。
Rabastens ;ラバスタンと言う町の「Pâtisserie Rivières ;パティスリー・リヴィエール」で
作られているナヴェットは、アルビのそれとは少し違うものでした。
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↑ その名は「navette tarnaise;ナヴェット・タルネーズ(タルヌ県のナヴェット)」
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↑ サイズは大きめの3種類

雑誌で見つけた、そのちょっと異なるナヴェットを食べたくってRabastens へGo!
* Toulouse ;トゥールーズからGaillac ;ガイヤックまで電車で50分、更にバスで20分♪

小さな町のお菓子屋さんではありましたが、美しくてクオリティーの高いお菓子が並んでいました♥

お店のご主人が奥にある広いラボで、実際にナヴェットの成形を実演してくださいました♪
型抜きしているのではなく、丸めた生地からあっと言う間に同じ大きさ&形に成形していく姿は
まさしくプロの技。
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これにアーモンドスライスと砂糖を振って焼けば出来あがりです。
生地はPâte sabléeと同じようなもので細かく刻んだraisins secs(レーズン)とbigarreaux confits
(ドレンチェリー)が入っており、香りつけにはオレンジ花水ではなく、乾燥させたオレンジの皮とバニラの鞘(使った後の鞘を再利用)を細かい粉にしたものを使っているため、とても自然で上品な香りがします。
アルビで買ったナヴェットは生地が厚めで外側はサクッ、中はフワッとした感じでこれも美味しかったのです
が、こちらは全体的にサクッとした食感。形も味も洗練されている印象でした♪


この菓子の起源については、はっきりしていません。
ナヴェット形に成形するお菓子は古くからあったようですが、19世紀中頃以前の本でナヴェットと言う名前の
お菓子は今のところ見つけられず・・・。


L’inventaire du patrimoine culinaire de la France Midi-Pyrénées」の中では
Albi ;アルビのスペシャリテと言うだけではなく、Nantes ;ナント、Orléans ;オルレアン、Marseille ;
マルセイユ、Castelnaudary ;カステルノーダリーの町でもスペシャリテでもあったと書かれています。

しかし、現在でもスペシャリテとして残っているのはマルセイユをはじめとするプロヴァンス地方と
このアルビを中心とする地域を含む(革命以前の州としての)ラングドックではないでしょうか。

19世紀末から20世紀前半に出版された本の中には他にも
Navettes aux amandes(アーモンド入りナヴェット)」や「Navettes d’Italie (イタリアのナヴェット)」「Navettes d’Espagne(スペインのナヴェット)」という名前もありましたが、
地名が付いたものは「Navettes d’Orléans(オルレアンのナヴェット)」しか見つけることは
出来ず・・・。

*とはいえ、 フランス各地のスペシャリテについて書かれた「Trésor gastronomique de France(Curnonsky /Austin de Croze共著1933年)」の中にはAlbiの他にCastelnaudaryでもスペシャリテとしてナヴェットは記載されている。

*いずれもオレンジ花水やレモンのゼストで香り付けした生地を小さなナヴェット形に成型し、縦方向に切り込みを入れて焼いたお菓子だが、Navettes d’Italieは発酵生地で作られ、Navettes d’Orléansには重曹が使われているという違いがある。
* 「Le Mémorial historique et géographique de la Pâtisserie(Pierre Lacam 1908)」の中では、Navettes d’ItalieとNavettes d’Espagneはナヴェット形の両端に小さく丸い頭が出来るように成形してありこれはかつてスペインとのつながりがあったフランスの北部やベルギーでクリスマス前の時期に見られるcoquilleやcougnouの形を想起させる。


さて、アルビでこの菓子が作られるようになったのはいつのことだったのでしょう?
カタリ派の時代だという説もありますが、一般には18世紀だと言われています。
*因みにマルセイユにある「Four des Navettes ;フール・デ・ナヴェット」のナヴェットが考案されたのは
店の創業と同じ1781年。


記述として残っているのは1913年に出版されたアルビ地方の料理本
La vie provinciale. Au pays de Cocagne(Louis Rieux)」で、生地には刻んだcédrat confitが
入っているものでした。

Pâtisserie Rivièresの店主で4代目のGuy Rivières氏によれば
店が創業した1894年からすでに作っていたということですので、19世末にはもう作られていたことになりますね。
このことから想像するに18世紀からあったかどうかは分かりませんが、19世紀中頃にはあったかも?

* Pâtisserie Rivièresを訪れたのは今から10年前の2002年7月のこと。
Guy Rivières氏はすでに引退し、残念ながらお店は違う人の手に渡っているもよう。
同じナヴェットが作られているかどうかは不明。




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by Ethno-PATISSERIE | 2012-08-12 00:04 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(2)

Massepain de Montbazens ; マスパン・ドゥ・モンバザン

以前「Massepains de Saint-Léonard de Noblat; マスパン・ドゥ・サンレオナール・ドゥ・ノブラ」をご紹介した際に「マスパンという名前の付いたお菓子は、(↓のように)大きく3タイプに分けることが出来る」と書きました。
・アーモンド+フルーツの「カリソン」タイプ
・アーモンドベースの素朴な「マカロン」タイプ
・ビスキュイタイプ(アーモンドは入っていない)



今回はビスキュイ系マスパンです。

Le Massepain de Montbazens ;マスパン・ドゥ・モンバザン
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これはAveyron県(Midi-Pyrénées地方)にあるMontbazens ; モンバザンと言う町のスペシャリテです。
(周辺地域でも作られています)
「卵、砂糖、小麦粉(&バニラ)」で作られる、シンプルでとても軽いお菓子。
紙を敷いた型に生地を入れ、表面に砂糖を振って焼いてあるのが特徴です。
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                    ↑ 内部はこんな感じ



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この町を訪れたのは2002年のこと。

Rodezから、この町から遠くないBelcastelまで行った帰りにタクシーで寄ってもらいました。
この町にはboulangerie-pâtisserieが2軒。
もう1軒がまだ昼休みだったので、残念ながら1種類しか買えませんでした。

たまたま歩いていたおばあさんにこの菓子について尋ねてみると
お店で買うこともあるけれど、各家に代々伝わるルセットがあるし、簡単だから今でも家で作るわよ。
crème anglaise(アングレーズソース)やsalade de fruits(フルーツサラダ)、île flottante(イル・フロッタント)を添えて食べると美味しいの。
」と教えてくれました♪

この辺りでいつ頃から作られるようになったのかは不明ですが
「19世紀、この町のある家族がとっても美味しいマスパンを作っていた」ことが知られています。
また、それまでは家で作られるお菓子だったものが1950年代からはお店でもはんばいされるようになり
この頃は「近郊の農家が材料を持参し、パン屋が製造していた」ことも分かっています。

mariage(婚礼)の際には、大きさの違うマスパンを3~5個ピラミッド状に重ね
フォンダンをかけたり、上に新郎新婦の人形を飾ってPièce montée;ピエスモンテにして供され
この伝統は今でも続いていると言います。(見てみたい!)

でも『なぜビスキュイがこの辺りで「マスパン」と呼ばれるようになったのか?』は分からずじまい。


Biscuit de Savoie ; ビスキュイ・ドゥ・サヴォアタイプの菓子は、今から3世紀程前にはフランス中に
広まっていたそうですが、マスパンと言う名前で今でも作られているのは
この「Massepain de Montbazens ; マスパン・ドゥ・モンバザン」以外には
Quercy ;ケルシー地方の「Massepain du Quercy ; マスパン・デュ・ケルシー」と
Périgord ; ペリゴール地方の「 Massepain périgourdin ; マスパン・ペリグルダン」でしょう。
* 『Quercy ;ケルシー』とはMidi-Pyrénées地方のLot ; ロット県とTarn-et-Garonneタルン・エ・ガロンヌ県に広がる地域のこと。
* 『Périgord ; ペリゴール』とはAquitaine 地方のPérigueux ; ペリグーを中心に広がる地域のこと。


お店で販売されているのはあまり見かけませんが、これらの地方のマルシェではしばしば目にすることが出来ます。
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       ↑ これはSarlat la Canéda(Dordogne県)のMarché(朝市)で見つけたマスパン♪


1933年に出版された、フランス各地の食に関するスペシャリテを紹介している
Le Trésor gastronomique de France (Curnonsky,Austin de Croze共著) 」の中には
Massepains de Périgord
Massepains de Montauban の2種類が掲載されていて
このころ既にスペシャリテとして認識されていたことが分かります。


各家庭に伝わるルセットで手作りされる、シンプルだけど個性的なマスパン。
結婚式で出されるピエスモンテのマスパン。
家族や友人たちと一緒に食べられているマスパンを想うと、思わず笑顔に…^^




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by Ethno-PATISSERIE | 2011-08-21 10:50 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(4)

La Flaune;フローヌ

フランス全土に数え切れないほど様々なフロマージュのあるフランス。
地元で作られるフレッシュチーズを使ったチーズケーキもあちこちで目にすることが出来ます。

la flaune;フローヌ」は、チーズ作りの際に残る乳清(ホエー)から作られた「recuite ;ルキュイット」と呼ばれるフレッシュチーズに卵、砂糖を加え、オレンジ花水で香りつけたものをPâte à brisée;
パータブリゼを敷いた型に入れオーブンで焼いたタルトです。
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Aveyron;アヴェイロン県南部(Millau;ミヨー/St Affrique;サン・タフリック)やTarn;タルン県北東部、Lacaune;ラコーヌ種の羊が育てられている地域(ロックフォールチーズ等を生産)のスペシャリテでflône,flausone,flazoune(オック語ではflausona)とも呼ばれます。
b0189215_14184587.jpg← フロマジュリーでルキュイットを購入。
ビニール袋で量り売り。
 
b0189215_14202129.jpg← 脂肪分の少ないモロモロしたチーズだけど、
羊乳製なのでコクがある。
 

これらの「flaune,flône,flausone」という名前は『flan;フラン』の変形。
この『flan;フラン』という語は古フランク語で円盤状のものを示す「flado;フラド」に由来しています。
flan;フランはご存知の方も多いでしょうが、「卵ベースのappareilを詰めて焼いたタルト」のこと。
Pays de la Loireのfion;フィオンやCorseのfiadone;フィアドーヌ等も同じflan;フランの仲間です。

b0189215_14412252.jpg→ こちらは取材させて頂いたパティスリーで購入した
フローヌのタルトレット(ミニサイズ)
 

12世紀には「flaon」と呼ばれる、チーズやクリームに卵や砂糖を混ぜたもので作る大きなタルトが存在していました。
14世紀にトゥールーズで「 flausones 」や「 flauzon 」と言うお菓子についての記述が見られますが、
これについて記載されている資料は19世紀以前までは非常に珍しいものだったようです。
この菓子は元々、お祭りや家族のお祝いの時に家庭で作られるものでした。
お菓子屋さんで製造・販売ざれるようになったのは第一次・第二次世界大戦間頃から。


さて、これを初めて食べたのは2004年、Millauへ行った時のこと。

b0189215_1444059.jpgランチを食べたレストランでこの菓子について尋ねると、デザートの後にわざわざ小さな
フローヌとお皿に盛ったルキュイットを持ってきて味見させてくださったのでした♥

日本でも「Ricotta di Pecora;リコッタ ディ ペコラ」というイタリアの羊乳製リコッタ(ホエーチーズ)が手に入るので、ルキュイットの代わりにこれを使ってフローヌを作りました。
(因みにRicottaもrecuite も「もう一度火を通した」という同じ意味の名前が付けられています)
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b0189215_14354549.jpg←こちらが「リコッタ ディ ペコラ」

以前コルシカのBrocciu;ブロッチュでFiadone; フィアドーヌを作った時には多少羊臭さがあったのですが、
このリコッタでは全く臭さは感じられず、出来上がりもルキュイットを使ったものにそっくり♪
今度この地方へ行く機会があったら、また是非食べたいお菓子です。



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by Ethno-PATISSERIE | 2011-05-08 14:54 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(4)

La Croquande ;クロカンド

b0189215_12171556.jpgb0189215_12154525.jpg「Le Soleil de Marcillac」にとっても
良く似たお菓子が同じRodez県Villefranche de Rouergue;ヴィルフランシュ・ドゥ・ルエルグという町にあります。
名前は「Croquande ;クロカンド 」。
形も材料も同じです。


→ Aveyron川のほとりにある古い町並みが保存された素敵な街

b0189215_11353796.jpgこの町を訪れた時、最初に目にしたお店のクロカンドが非常に薄いもので、いかにも「Croquant ;クロカン=カリカリっとした」ものだったので、厚さの違うところがポイント?とも思いましたが別の店にはもっと厚みのある、ソレイユと同じものがあった為そうでもないようです。
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ソレイユが作り手によって様々なタイプがあったのと同様にクロカンドも色々なタイプがあるということなのでしょう。
こちらのクロカンドの上にはアーモンドではなくて胡桃が散らしてあり、ソレイユがかつて胡桃を散らしていたといことを想起させてくれます。

b0189215_11553196.jpgb0189215_11565824.jpgこの辺りはgâteaux à la brocheもスペシャリテとして売られているのですが、実際に製造している店はなく、販売のみでした。訪れる直前に行われた町のお祭りでは実演販売されたと聞きました。残念!


← 町で見つけたgâteaux à la broche

木曜日午前中に行われる青空市には新鮮な野菜やスペシャリテであるfouaceéchaudésといったお菓子にFarçous*の実演販売もあってとってもにぎやか。
b0189215_128191.jpgb0189215_1293444.jpgb0189215_12111640.jpg
↑ 片付け始めたマルシェ/ échaudés等のスペシャリテが色々並んでいます/ Farçous焼きたての熱々が食べられるので大人気!


*Farçousは固くなったパン、Blettes等の葉っぱ、ニンニク、ベーコンを併せてガレット状に焼いたもの。
市場では軽食として販売されていましたが、これにサラダと1杯のワイン(勿論マルシヤック!)があれば立派な食事になります。



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お菓子屋さん
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by Ethno-PATISSERIE | 2009-09-12 12:36 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(4)

Le Soleil de Marcillac ;ソレイユ・ドゥ・マルシヤック

Marcillac-Vallonはフランス南部、Midi-Pyrénées地方Aveyron県にある町で、県都であるRodez(ロデズ、patois;俚言ではRodès;ロデスと発音)の北西に位置しています。
Vallonが小さな谷を意味することから分かるように小さな渓谷となっており、斜面を利用してブドウ(95%がMansois;マンソワの地元名を持つ品種Fer Servadou)が植えられ、AOC Marcillac(1990年~赤・ロゼ)が造られています。

この町で作られているお菓子のスペシャリテがSoleil de Marcillac ;ソレイユ・ドゥ・マルシヤック
(同じ谷内にある別の町でもそれぞれにSoleilが作られています)
「Soleil」はフランス語で「太陽」を意味し、和訳すると「マルシヤックの太陽」という名前になります。
円形で、まわりにあるギザギザが太陽光線を表しているのだそう。
オレンジフラワーウオーターで香り付けし、上にはアーモンドとあられ糖が振ってある素朴な焼き菓子。
(ナッツはホールのノワゼットが使われることもありますが、元々は地元で採れる胡桃が使われていたそうで
注文すれば胡桃に代えてくれる店もあります)

b0189215_16235461.jpgいつからあるのか?どうしてこの形なのか?などは残念ながら全く分かっていません。1940年以前からパン屋がパンの焼成後、他のfouace;フアスやタルトと一緒にこれを焼いていて、それは現在のものとほとんど同じものであったことが分かっている程度。

この地を訪れたのは2002年7月のことでした。ヴァカンスシーズンも始まり、この辺りにも多くのヴァカンス客がいて、かつて塩が地中海から馬で運ばれていたのを再現するイヴェント等も行われていました。
夏でもこの辺りは交通の便が悪くタクシーでの移動を覚悟していましたが、車で移動するヴァカンス客のお陰で2回も目的地まで送ってもらうことが出来ました。
マルシヤックへもそのおかげで無事到着!
                            
↑ 近くにあるSalles-la-Sourceの滝


この町のパン屋さんMichel Estève氏に取材をお願いしたのですが、この方は既に引退していた為
Michel Varin氏がソレイユの成形法を実演してくださいました。

作り手によって違いますが基本的な作り方はこんな感じ。
b0189215_16135853.jpgb0189215_16144375.jpgb0189215_16162486.jpg
・小麦粉、砂糖、卵、バター、塩、オレンジフラワーウオーターで生地を作り、寝かせる。
・丸く平らに伸ばして周囲に切込みを入れて2本1組でクロスする。
・真ん中に十字の切込みを入れて折り返し、表面を卵でドレし、アーモンドスライスとあられ糖を散らす。
・200度のオーブンで焼く。

b0189215_16211067.jpgb0189215_16545837.jpg途中Estève氏と地元紙の記者が来て逆取材。
その後、場所を移し観光局や町の方々が集まってこの付近で作られている3種類のソレイユと冷えたマルシヤック・ロゼで歓迎してくださいました。



↓ 左からThierry Rossi(Marcillac), Azaïs(Marcillac), Boyer(St Christophe-Vallon)
b0189215_16363116.jpgb0189215_16391237.jpgb0189215_16404483.jpg

このように町ではお客さんが来るとこの2つで迎える習慣があるそうです。
また結婚式の祝杯に添えられたり、家族や仲間同士でカフェを飲む時1切れ買って一緒に食べるという習慣もありましたが、現在ではそれも廃れつつあるのだとか。
今でも変わらず続いている習慣は、毎年lundi de Pentecôteの日(聖霊降臨祭の月曜日)に行われるMarcillacのブドウ栽培者のお祭り「La Saint-Bourrou」のミサでは必ずソレイユとマンソワ(マルシヤックのワイン)で終ること。

Saint-Bourrouはマルシヤックのブドウ農家の聖人。Bourgeon(ラングドック語でBourrou) de la vigne;ブドウの新芽に由来する聖人です。冬の間枯れ枝のようだった枝が無事に新芽を出し、沢山実がなることを願うもので、それに太陽の形をしたお菓子を組み合わせるというのはとても自然な感じがします。
「このお祭りの為に作られたお菓子」というのは間違いないようですね。
(Aveyron県ではこの近くにvins d’Estaing,vins d’Entraygues、また東部にCôtes de Millauがありますが
いずれもVDQS。AOCはMarcillacのみ)


おまけのFour Communal
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by Ethno-PATISSERIE | 2009-09-06 17:10 | ⑯Midi-Pyrenees | Trackback | Comments(4)