カテゴリ:①Alsace( 2 )

Berawecka ; ベラヴェカ

日本でも見られるようになった「Berawecka ; ベラヴェカ」。
*日本では「ベラベッカ」と書かれることが多いようですが、「ベラヴェカ」の方がより発音に近いです。
b0189215_21534663.jpg
↑ こちらはMaison Ferberのベラヴェカ

洋ナシやプルーン、イチジク、レーズン等のドライフルーツとナッツ類、
そしてシナモンやナツメグ等のスパイスにパン生地を加えて作るこの菓子は
クリスマスシーズンに作られ、パン・デピスやヴァン・ショーと共に
クリスマス市に欠かせないものです。
b0189215_2210791.jpg
↑ 乾燥させた洋ナシ

クリスマスの真夜中のミサへ行く前に食べる習慣もあり、
かつては「新年のパン」「年賀のパン」として新年の挨拶に訪れる家族や友人たちに出される習慣もありました。

フルーツの保存法として最も古いものは、乾燥することだったことは想像に難くありません。
このドライフルーツにスパイスを加えて作られるこの菓子がアルザスに見られるようになったのは
中世のことだと考えられています。
(BieraweggaとHutwelbrotと言う名前が1557年のある文書に記載されているとか)

フランス語らしからぬこの「Berawecka ; ベラヴェカ」と言う名前は
フランスの方言の1つであるアルザス語。
フランス語に訳すとPain aux poiresですがPain aux fruitsとも書かれます。
因みに現在のアルザス語では
洋ナシ=フランス語Poire=アルザス語Beera
小さなパン=フランス語Petit Pain=アルザス語Wäckla
ベラヴェカ=フランス語Pain aux fruits=アルザス語Beerawäcka
となっています。


b0189215_22491763.jpgb0189215_22493694.jpg
↑ Maison Feberのベラヴェカ。色々なドライフルーツが入っていてそれぞれが瑞々しい。

アルザス語の発音は地域(村や町等)によって音韻が異なり、
特に南部と北部での差は大きくなります。
地域のより発音に近いつづり字が使われた為、この菓子の名前も様々な表記が見られます。
例えば名詞の語尾は、南部では「-e」ですが、北部では「-a」になります。
その為ベラヴェカも南部は「Berawecka 」、北部は「Berawecke」に。


b0189215_2313952.jpgb0189215_2315628.jpg
↑ コルマールのHelmstetterでクルミなしと聞いて購入。フルーツの形はあまり分からずコンパクトな印象。

ただし、これ以外にも名前はBierawecka,Bireweck,Hogui,Hoguey,Ogey等々沢山あり、
出来あがりのお菓子も日本で多く見られるようなドライフルーツの塊のようなパン生地の少ないもの、
パン生地が多めに入っているもの、ドライフルーツをパン生地で巻きこんだもの等、
地域や作る家庭によって様々です。

アルザス北部Bas-Rhin県で作られる伝統的なberaweckeは
パン生地(ブリオッシュ生地)でドライフルーツを巻いたタイプで、
南部Haut-Rhin県のBerawecka はドライフルーツに少ないパン生地を混ぜたもので作られる
日持ちのするタイプと大きく分けられるようですが、
今日お店で見られるのは後者のタイプばかりで、前者タイプは家庭で作られることが多いようです。

こちらの映像では最初に前者タイプのベラヴェカを作っているところが見られます。

前者のタイプはかつて、12月24日の午後に各家庭で焼くばかりの状態まで仕込んだものをパン屋へ持っていき、
焼いてもらうということも行われていました。

オー・ラン県西部リボーヴィレ郡で話されているロマンス語方言welcheウェルシュを話す地方ではhoggeï(Hogey, hoggeï,Ogey...)と言う名前で呼ばれ、これもパン生地で巻いたタイプです。


アルザス地方以外にも同様のお菓子は南ドイツ、オーストリアのチロル地方でも見られます。
・「Hutzelbrot ;フッツェルブロート」この名前はアルザスでも見られます。Hutzelは林檎や洋ナシを干したもの(恐らく同様の意味を持つアレマン語のHutzeに由来すると思われます)。
・「Kletzenbrot ;クレッツェンブロート」Kletzenはバイエルン・オーストリア語で乾燥させた洋ナシのこと(Kletzenは複数形、単数形はKletze)。これはまた「Früchtebrot ; フリュヒテブロート(=フルーツパン)」とも呼ばれます。


↑ Hutzelbrotを作っているところが見られます。

また、オー・ラン県に隣接するロレーヌ地方、ヴォージュ県Saint-Dié-des-Vosgesの地域にも
同様にクリスマス時期に食べられるお菓子「Pain Gallu ;パン・ガリュ」があります。
別名Rama, Raimâtと言い、これは「ライ麦パンの生地に乾燥させた洋ナシを混ぜたもの」を
意味する名前に由来するとされていますが、現在ではドライフルーツやナッツに
生の洋ナシやリンゴを加えて作られている点が、上記のものとはちょっと違います。
(ベラヴェカよりもパン生地が多め)

b0189215_23402234.jpgb0189215_23404032.jpg
↑ こちらは姫路のステラベーカリーさんがわざわざクルミ無しで作ってくださったベラヴェカ♥

他のドライフルーツ入りパンとの違いは、名前の由来にもなっている通り
ドライの洋ナシを使っているか否かという点ですね。


アルザスだけでも色々な名前・種類のあるベラヴェカ。

初めて食べたのは2004年、フェルベールさんの取材に行った時でした。
クルミアレルギーなので、それまで食べてみようと思ったことはありませんでしたが
せっかく頂いたものだし、ここのなら絶対に美味しいはずだからと、クルミに注意しながら
薬を片手に食べたのでした^^


これだけ種類のあるのが分かると、食べ歩きをして
どこでどんな名前・タイプが作られているのか検証してみたくてたまらなくなってきます。
(クルミアレルギーじゃなければ、きっと実行していたはず…)



にほんブログ村 スイーツブログへ
にほんブログ村 旅行ブログ フランス旅行へ

[PR]
by Ethno-PATISSERIE | 2011-12-28 01:23 | ①Alsace | Trackback | Comments(2)

Agneau pascal ;アニョー・パスカル(復活祭の仔羊)

Agneau pascal ;アニョー・パスカルはアルザス地方で復活祭の時に食べられるお菓子。
地元Soufflenheim ;スフレンナイムで作られる陶器型を使って焼かれます。
復活祭は移動祝祭日で、今年(2011年)は4月24日がその日。
b0189215_21131491.jpg

フランス語でAgneau pascal 或いはAgneau de Paquesと書かれるこの菓子は、
アルザス語ではOschterlammele,Lammala, lämele , Haemele, hamele等々、地域によって微妙に違います。

*Soufflenheimカタカナではスフレンハイム、スフレンアイムと書かれていることが多いようですが、
スフレンナイム(より正確にはスフロンナイム)の方が実際の発音に近いように思います。


季節になるとパン屋さんやお菓子屋さんのショーウインドーに沢山並びます。
伝統的なアニョー・パスカルには粉砂糖を振った後、赤いリボンを首に結び、背中には赤と白(アルザスの旗の色)か
黄と白(バチカン国旗の色)の旗がたてられるそうですが、実際には様々な色のリボンや旗が使われています。

<参考>
* バチカンの国旗はこちら
* アルザス地方の旗はこちら


多くの場合ビスキュイ生地で作られていますが、
アルザスに住むフェーヴコレクター友達はクグロフ生地(発酵生地)で作っていたそうです。
復活祭の日の朝食やおやつの時間にコーヒーや紅茶に浸して、或いはアルザスの白ワイン(Gewurztraminer vendanges tardives等々)と一緒に供されます。
b0189215_22303463.jpg

かつては復活祭のミサの後、名付け親から名付け子へこの菓子を贈る習慣がありました。

この習慣は16世紀に遡ると言われています。
1519年、アルザスのキリスト教神学者Thomas Murner(1475年―1537年)が書簡の中で
「男性がフィアンセの女性にアニョー・パスカルを贈っていた」ことや、「復活祭のミサの帰り、子供たちに贈られていた」ことに言及しているのだそうです。

一方「Les Moules à gâteaux/Bernard Demay著」によれば
陶器のクグロフ型は17世紀から、仔羊や魚形等の型は18世紀から広く作られるようになったとあります。

祝い菓子は元々普段作られるパン生地に卵や砂糖、牛乳などを加えて作られたものでした。
同じ陶器型で焼かれるクグロフが現在でも発酵生地で作られていることや、
上記のように現在でも発酵生地で作る人もいることから、
アニョー・パスカルもかつては発酵生地で作られていたことは想像に難くありません。

発酵生地であれば家庭でも材料が揃いやすく、
オーブンが無くてもパン屋さんに持っていって焼いてもらうことが可能でした。

ビスキュイ生地の材料は小麦粉、卵、砂糖だけでバターも使わない為、比較的誰にでも作りやすいものです。
とは言え、かつて高価であった砂糖が多く使われ、泡立てる道具や技術も必要であり
生地が出来たらすぐオーブンで焼く必要もあることから、
一般的な家庭でも広く作られるようになるにはそれらの条件が整っていなければなりません。
18世紀末になって、それまでの暖炉での直火調理から竈へと変化していったことにより
家庭でもビスキュイ生地のアニョー・パスカルが作られるようになったのではないかと思われます。


現在これらの型はストラスブールの北40km程の所にあるSoufflenheim ;スフレンナイムで作られています。
すぐ近くにあるHaguenau ;アグノーの森からは陶土が採れ、窯に使われる薪も調達できることから
古代から陶器製造で有名な所でした。
19世紀まではアルザス地方の各町や村には、それぞれ陶器製の生活用品を作る為に陶器職人が居ました。
作り手の職人によって独自のスタイル、釉薬の色のものが作られた為、古い陶器型には様々なものが存在しています。
かつて子供に贈る習慣があったことから複数の型を所有していた家庭も多かったためか
蚤の市等でもこの型を目にすることができます。

b0189215_2125660.jpg私が持っているアニョーの型は大小4個。
一番小さなものはニーデルモルシュヴィルにある
メゾン・フェルベールで買ったもの。
この店で販売されている陶器の型はスフレンナイムで最も古い1802年創業の工房「Poterie Friedmann」製で、
特にクグロフ型はクリスチーヌさんが気にいった形に作って貰ったという特注品です。
(煙突部分が細くデザインされていて、ふっくら美しいクグロフに仕上がります^^)
1888年創業の「Poterie Philippe Lehmann」製の型も
なかなかハンサムに焼き上がります。

この子羊型の他にも魚、ユリの花、星、ザリガニ等々、色々な形の陶器型があり、それぞれに作られる時期やこめられる願いがあり、アルザス地方菓子の特徴的なものと言えます。
(これらの型は現在でもPoterie Friedmannで製造されています)


← 下の小さいのがフェルベールさんのお店で買った子羊型

<参考>
*こちらはスフレンナイムの工房でアニョー・パスカル型を製造している映像です。興味のある方は是非ご覧ください。


そしてこちらは福岡にあるオーストリア菓子サイラーで買った「Osterlamm;オースタラム」。
b0189215_21214674.jpg

小旗も付いた本格的なもので、ローマジパンを使った生地で出来ています。
まわりの白いのは粉砂糖ではなくてココナッツ。
アプリコットジャムを塗った後にココナッツをまぶしてあるので、適度に酸味もあって美味しい~♪

2000年4月にはじめてお店を訪れた時購入した「オースタラム」はクルミ入りでした。
知らずに買ってしまったのですが、クルミアレルギーの私は結局食べられず…(涙)。
(今年のはクルミを使っていないということでリベンジです^^)


こちらはHarukoさんとのコラボレッスン「coeur à cour」で作ったアニョー・パスカル。
b0189215_21524712.jpg

シンプルなビスキュイ生地のアニョーに
フルーツサラダとフランボワーズソース、そしてクレーム・シャンティを添えました。
レモンのジュレとコンフィチュールを添えても。
生地にナッツを加えたヴァージョンにはプラリネ入りのクリームを…。
Harukoさんの素敵なコーディネイトのお陰で美味しさ激増~♥

*コラボレッスン「coeur à cour」は現在行っておりません。


復活祭、詳細についてはまた次回に。

[PR]
by Ethno-PATISSERIE | 2011-04-20 22:36 | ①Alsace | Trackback | Comments(4)