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フェーヴ「LSCC」 その②  ― 文字が無いバージョン ―

そのから続き…

7種類のフェーヴには「LSCC」の文字が入っていないものもありました。
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それは大量生産する為に工場で作られたもので(↑ コレ)
鋳込み成形ではなく型に土を押しつける加圧成型の方法が取られました。
出来たフェーヴの裏側は平らで凹みはありません。(1985年から95年の10年間にわたり工場で生産)


ただし、クリスチアヌによって鋳込み成形で作られたフェーヴの中にも例外はあって
卸売会社であるFrance-Décor ;フランス・デコール社で販売されたフェーヴの箱には
同じ形のフェーヴ、しかも鋳込み成形で作られたものにも関わらずサインの無いものがあります。
これらは確かにクリスチアヌによって作られたものでしたが、期限付きで大量に作る必要があった為
文字を入れる時間が無かったからだそう。
この箱は白いフェーヴ20種類が200個入っており、そのうちの7種類がクリスチアヌの作ったもの。
他の13種類は彼女のような他のクリエーターによって制作されたものでした。

パティシエ向けのオリジナルフェーヴが見られるようになったのは1980年代。
この当時、卸売り会社はパティシエたちを満足させるべく商品の多様化に乗り出しました。
Patisfrance ;パティス・フランス社のディレクターがクリスチアヌにコンタクトを取ったのもこの時期。
この他に南仏Aubagne ;オーバーニュのサントン職人Maurin ;モウラン氏もこの新しい市場に将来性を見出し、
パティシエたちの要望にこたえることのできるアーティストを探していました。
クリスチアヌはこのような匿名アーティストの1人だったと考えられますが、まさか自分のフェーヴが後に工場生産され、
卸売会社から販売されるようになるとは想像していなかったことでしょう。


Limoges-Castel ;リモージュ・カステル社の復刻版フェーヴに見られるクリスチアヌ・ショパン
リモージュでフェーヴを製造していたRanque-Ducongé ;ランク・デュコンジェ社は、1974年
小さな磁器製品を製造していたリモージュ・カステル社に買収され、鋳鉄或いは石膏製のフェーヴ型は
リモージュ・カステル社の所有となりました。

その後、これらの型を使用して復刻版の製造がはじまりますが、これに彩色するスタッフが必要となり
クリスチアヌがそれを頼まれることに・・・。
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           ↑ 復刻版フェーヴで彩色されたもの。これらはクリスチアヌのよるものか?

「白い素焼きのフェーヴの入った紙袋が彼女のアトリエに届けられ、ここで彩色された後に
ふたたび返されて焼成される」という方法で、復刻版の多くが彼女のアトリエで彩色されていたのです。
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↑ こちらはリモージュ・カステルの型で作られたフェーヴにクリスチアヌが彩色したもの。モニクさんから頂いたので間違いなし^^

1987年、リモージュ・カステル社の「フェーヴ」制作部門Moyet-Perrin ;モワイエ・ペラン社
譲渡されました。
それまでのつながりもあってクリスチアヌは後に、モワイエ・ペラン社で作られた復刻版フェーヴに
彩色の試みを行いますが実際に流通することは無く、コレクターへ販売のみに留まりました。

モワイエ・ペラン社で作られる、その他の裏面の平らなフェーヴへ気まぐれに彩色したものも、試験的なもので
販売されることはなかったのでした。



*L'autorisation de Monique et François Joannès, ainsi que de l'éditeur de Collectionneur Chineur.
この内容はCollectionneur Chineur紙127号に掲載されたモニック、フランソワ・ジョアネス夫妻による記事を元にし、同夫妻、並びに出版社であるコレクショヌール・シヌール社の許可を得て書かれています。無断転載はご遠慮ください。




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by Ethno-PATISSERIE | 2013-02-24 17:08 | fève | Trackback | Comments(4)

フェーヴ「LSCC」 その①  ― フェーヴ裏にある文字の意味 ―

私はお菓子屋さん等、お店オリジナルのフェーヴの他に、工房や作家さんが作ったもの、
そして古いフェーヴ、製造をやめてしまった古いメーカーのもの等々、多岐にわたって集めており、
それぞれメーカーごとに分類して整理しています。

歴史的なことが気になる性質なので、工房についても様々な資料を調べたり、それでも分からない場合は
知り合いのコレクターさん達の知識をお借りして、いつ頃・誰が・どのようなフェーヴを製造していたのか?を調べます。
その中にはどこのメーカー、工房で作られたのかがはっきりしないものもあり、
裏に「LSCC」の文字が入ったフェーヴもその意味が分からないものの1つでした。
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以前パリのフェーヴサロンで、フェーヴの著作も多く長年研究を続けているMonique Joannèsさんにお会いした時、
その話になったことがありました。
別の工房があるメーカーに頼まれてフェーヴ作りに協力することがあったことを認識したのはこの時だったと思います。

それから数年過ぎた昨年の夏、彼女が「Collectionneur & Chineur(コチラ↓)」というコレクター向け冊子に
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このフェーヴについて調べたレポートが掲載されたことを教えて頂き、丁寧に分類されたフェーヴと共に届きました。
モニクさんから早々にブログ掲載許可も頂いていたのですが、多忙の為に時間が取れず今頃のupに…^^;

このフェーヴの存在を知らないとあまり興味の無い話だとは思いますが、
フランスのコレクターの間では疑問に思っていた人も結構居て、すっきりした人も多いはず。
もしかしたらあなたがフランスで何気なく買ったそのフェーヴ、裏にこの文字が入っているかも?


結論から言うと、このフェーヴを製造したのはChristiane Chapon;クリスチアヌ・シャポンという陶芸・彫刻家。
彼女の祖父Louis Soubrenie氏も職人。リモージュ焼きの絵付け師であり、デザイナーでした。

                  そう、『「LSCC」は彼ら2人のイニシャルだった』のです!

彼女が祖父を尊敬していたことが伺われて、今まで単なるアルファベット4文字だったものが
一気に心温まる文字に見えてくるから不思議~♪

このサインが入っていて、彼女の作品であることがはっきりしているものが7種類あります。
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このうち「セミ」と「サボ(木靴)」は以前からあったモデルを引き継いだもので
もっと価値を与えたいと思い、台を取り付けた」のだといいます。
これら7種類は初期に制作されたものだそうで、型に泥漿(液体の土)を流し込む方法(=鋳込み成形)を用いて作られ、
1つ1つ手作業で型抜きされた後リモージュ近郊の窯で焼かれました。
この方法で制作されたものは裏側が凹むという分かりやすい特徴があります。
また、型入れ・型抜きの工程で小さな泡が入ったり欠けたりする欠陥が出来きやすいのだとか。


この7種類の他に…

Ange(天使)
クリスチアヌが「音楽好きの天使」と呼んでいる、天使のレリーフが入ったもの。
これは1994年ブーランジュリー「Max Poîlane ;マックス・ポワラーヌ」と
パティスリー「La Vieille France ;ラ・ヴィエイユ・フランス」から同時に注文されたもの。
これには裏に「LSCC」のスタンプがあり、さらに多くの場合黒字で「Max Poîlane」か「VF」の文字が
入れられています。
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             ↑ 釉薬をかけたもの(マックス・ポワラーヌ)と素焼き(ラ・ヴィエイユ・フランス)


Lune ;リュヌ
(リュヌというと一般には月のことですが、ここでは「大きな丸い顔」のこと)
クリスチアヌはジョアネス夫妻に「このフェーヴはぺちゃんこな鼻をした、ちょっとおどけた顔にしたかった」のだ
と打ち明けられたそうな・・・^^ でも使われなかった為、数の少ないモデル。
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彼女は自分の作ったフェーヴに彩色を施す試みも行っていますが、長くつづことはありませんでした。
緑や金で線書きの入ったものを時折見つけられるのみとか。
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↑ これはモニクさんから頂いたフェーヴで、素焼きに線書きの入ったもの。2度目の焼成は行われていないので濡れると溶けてしまう。



そのに続く...


L'autorisation de Monique et François Joannès, ainsi que de l'éditeur de Collectionneur Chineur.
この内容はCollectionneur Chineur紙127号に掲載されたモニック、フランソワ・ジョアネス夫妻による記事を元にし、同夫妻、並びに出版社であるコレクショヌール・シヌール社の許可を得て書かれています。無断転載はご遠慮ください。



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by Ethno-PATISSERIE | 2013-02-22 19:25 | fève工房 | Trackback | Comments(4)