フェーヴ工房見学 Nigon ; ニゴン
2010年 08月 13日
Monique LesbroussartさんのPoterie
(陶器工房)を訪れたのは2008年11月のこと。
(以前に書いたPonchonと同日)
→ こちらがNigonのフェーヴたち♪
大きめで優しい色合いの、とても親しみ深い
フェーヴです
パリから北北西へ電車で1時間余り。
向かうBeauvais はPicardie地方Oise県の県庁所在地でこの辺りはPays de Bray picardと呼ばれ、
かつて製陶が盛んだった地域です。
Beauvaisの駅まではMoniqueさんが車で迎えに来てくださいました。
道すがら、ここはレンガを専門に作っていた町、こちらは土管を作っていた村などの説明を聞き、地域全体が焼き物で
成り立っていたことがうかがえます。
お宅は木組みで手入れの行き届いたとっても素敵な家で、昔からある典型的なスタイル(瓦は陶器)。
朝早めの到着だったのでご自宅のサロンでお茶を飲みながら、この街の製陶業の歴史やお2人についてお聞きしました。
彼らの工房があるSavigniesでの陶器製造の起源は太古に遡るともいわれています。
中世の時代に一時廃れ、14世紀からその名声が知られるようになります。16世紀には40ものアトリエが存在し、
19世紀初頭まで製造の中心地となっていたそうです。
その後陶土の供給が難しくなり、需要も減った為1909年に最後の工房がその製造を止めました。
Jean Louis Nigon氏はそんな製陶業者を先祖に持つ人で、学校でこの仕事を学んだ後1970年、ここに自分のアトリエを開きました。新しい手法を使ったオリジナル作品を作る半面、この地に伝わる古い炻器の複製も作っています。
Monique Lesbroussartさんは偶然にもNigon氏と同じ学校を出たそうで、Somme県にあるPoterieのアトリエに10年間いて技術を習得した後、自分自身の作品を創造する為
1986年、Nigon氏のアトリエに加わりました。
→ 古い蜜蜂の巣籠が飾ってありました♪
フェーヴをつくりはじめたのは1992年から。村にあるパン屋の為に作ったのが最初です。
今までに110種類ものフェーヴが作られているそうです。
ここで工房へ移って簡単に作り方を説明してくださいました。
まずBois des Fossesへ陶土を掘りに行くことから
始まります。
2週間ほどかけて石やその他不要なものを取り除いて
ピュアな陶土にします。
灰色と茶色の2種類の土がありましたが、焼成する際に耐えられる温度が違うと説明してくださいました。
←手前が精製前の土で、左の丸いのが出来上がった陶土
フェーヴ用の型は1つずつ石膏で作られたもので、これに陶土を空気が入らないように詰めて表面を平らにならしロゴのスタンプを押してから、別の陶土を使って、その粘着力を利用して取り出します。
これを乾燥させてから850~1000℃の窯で8時間程焼成、釉薬をかけてもう1度1000℃近い温度で焼いて完成。
アトリエを作る等の改装時に、かつて窯のあった跡や作られていた陶器が沢山出てきたとか。
敷地内も土を掘れば陶器の欠片が今でも出てくるそうです。
納屋にはそんなコレクションと、季節がら自宅のリンゴ園で採れた様々な古い品種のリンゴが並べられていました。
古い陶片から古いテクニックを再発見することもあるのだそう。新旧のテクニックにNigonさんのセンスが加わって独自の陶作品がつくられているのですね。
また、ここの外壁はとても特徴的。
この辺で作られていたレンガや土管、シードル用瓶等の商品にならないものを再利用して作られていたことが分かります。
しかも模様のように美しいので、ブティックの壁は外の壁が利用されていました。
Nigon氏がろくろを使って作品を作る一方、彼女はmodelage;手びねり。ブティックにはそれぞれの作風がしっかり伝わってくる素敵な作品が沢山飾られていました。作品が欲しくなってしまう気持ちを抑え、自分用にフェーヴを選びました。
(少しにしようと思っても色違いがあるのでつい増えてしまいます)
← NigonさんとLesbroussartさん
ロゴのスタンプはアトリエで2種類見せていただいたのでこれだけだと思っていましたが、同時期にNigonを訪れていたというMonique Joannèsさんに後日フェーヴのサロンでお逢いした際 「実は初期にLesbroussartさんが作ったフェーヴには手書きでm Lと書いたものがあるのよ」と聞いてビックリ。
*Monique Joannèsさんについてはこちらを参照ください。
→ 見せていただいたスタンプ2種
← 左上が「m L」と手書きしてあるものです。
見えますか?
彼女からそのサイン入りのフェーヴを買ったという後日談まであった、楽しい訪問でした。
(取材;2008,11,14)