La Vaute とLes Vautes。単数と複数で違いのあるお菓子
2018年 07月 22日
ここでご紹介する『La Vaute ;ヴォート』は、ロレーヌ地方(現在のGrand-Est地域圏の一部)の地方菓子。
『Vaute;ヴォート(単数形)』と『Vautes;ヴォート(複数形)』では全く別物になるという、なんとも珍しいお菓子です。
複数形の方はフライパンで両面焼いて作る、クレープ状のお菓子。
こちらの方はより古くからあってロレーヌ地方の他、アルデンヌ地方、シャンパーニュ地方、ベルギー等、広い範囲で見られます。
地域によって名前も少しずつ変わりますが、一般的なものよりも厚めだったり、果物を混ぜた小さいものだったり、千切りにしたジャガイモを入りの塩味バージョンだったりお菓子自体も変わります。
・地域によってVauteの他にもVôte、Voûte、Vaûte等の名前が見られる。ジャガイモのヴォートはRapés ;ラぺという別名も。
・小さく焼いたものはBeignet;ベニエとも呼ばれる。ベニエは一般的には揚げたものを指すが、このあたりでは別の意味も持つ。
・最近はクレープ、ベニエと呼ばれることが多く、ヴォートの名前は使われないことがある。
・使われるフルーツはリンゴ、サクランボ、ミラベル、ブルーベリー、イチゴ等々。
古書をひも解くと…
「Dictionnaire de l'ancienne languefrançaise, et de tous ses dialectes du IXe au XVe siècle/1895」 1895年に出版された、9~15世紀の古いフランス語と俚言についての辞書の中には「Volte」の文字があり、omelette;オムレット(オムレツ), crèpe(クレープ) の意味があることが書かれていました。
さらに、ベルギー南部のフランス語圏では「vôte」, ジュラでは「voile」と言う名前で「omelette soufflé(スフレ風オムレツ)」を指し、ロレーヌ地方、メッス周辺では 「vôte」, シャンパーニュ地方では「vaute」と言う名前で「crêpe(クレープ)」を指す言葉であったことが書かれています。
さて、では単数の『Vaute;ヴォート』は?と言うと…。
オーブン用の器に季節のフルーツと共に入れて焼く、クラフティのようなタイプのお菓子になります。
・こちらのヴォートはサクランボやミラベルを使ったルセットが多く見受けられる。
・ロレーヌ地方以外でも単数形の「Vaute」は見られるが、この場合は1枚だけ大きく厚めに焼くクレープを指す。
クラフティと言っても小麦粉やバターも多く入るので食感はかなり違い、独特な食感。小麦粉が多い分重たくなりますが、最後に泡立てたメレンゲを加えることで軽さを出しています。
冷えると固く、重たくなるので温かいうちがより美味しく食べられますね。(焼きたてと全く同じではありませんが、焼き直した方が美味しい。)
「Encyclopédie des Spécialités pâtissières Tom 1 La Lorraine」 には、このタイプは19世紀から20世紀前半にかけて流行したとありました。
直火を使いフライパンで調理するクレープに比べ、こちらはオーブンが無いと作れません。
田舎でオーブンが使われるようになった時代に作られるようになった、新しいものであることが分かりますね。
フランス各地の食に関するスペシャリテを網羅する「L’inventaire du patrimineculinare de la France」のLorraine版には、歴史等の詳しい説明がなくルセットが掲載されているのみ。
色々と探してみましたが、残念ながらその歴史等、詳細は分かりませんでした。
いずれのお菓子も田舎で多く作られ、自分の家や近隣で採れたフルーツをたっぷり使ったおやつだったことは間違いありませんね。
※※※
別のお菓子になるんですね。
複数は、クレープ状のお菓子にベニエのようなお菓子!
どれも美味しそうです。
地方によって綴りが違うのですね。
単数は、クラフティのようなお菓子ですかぁ。
Roiboitさんの作られたヴォート、両方食べたいです!
サクランボと杏、アングレーズ・ソースがたまりません。
季節のフルーツたっぷりと使うと贅沢なデセールになりますね。
フルーツたっぷり入れると格別に美味しいです。生地の部分はちょっと独特な感じなのですよ♪ ミラベルでも作ってみたいと思います。