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『Gâteau nantais;ガトーナンテ』

Gâteau nantais;ガトーナンテ』=「ナントの菓子」という名前の通り、この町のスペシャリテの1つ。
Nantes;ナントはペイ・ド・ラ・ロワール地域圏、ロワール・アトランティック県の県庁所在地。
18世紀には当時のフランス植民地アンティル諸島との太平洋三角貿易により、砂糖・バニラ・ラム酒、コーヒー他多くの産物が荷揚げされ、フランス第一の港として経済的発展を遂げていた。

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↑ フランス地方菓子セミナー用に製作したバターを使わないガトーナンテ

アーモンド、小麦粉、卵、砂糖、(そしてバター)で作られる生地に、たっぷりとラム酒風味のシロップを浸み込ませ、表面をアプリコテし、更に真っ白なグラサージュをかけた、柔らかい焼き菓子です。

ネット上では手間を省くためかシロップや杏のジュレ(杏のナパージュ)無しのルセットも見られますが、
フランス各地の食に関するスペシャリテを網羅する
L’inventaire du patrimine culinare de la France ;1993 」のPaysde la Loire地方版でも、
同様の説明が書かれています。


LUのスペシャリテだったガトーナンテ
ナントで創業し、Petit beurreでも有名な「LU;リュ」ガトーナンテ20世紀初めから有名だった」と書かれているものもありますが、調べてみると1882年の裁判記録の中に、別の会社をGâteau nantaisの件で訴えているものを発見。

LUで販売されていたGâteau nantaisにパッケージも含めて酷似した商品が売られていたようで、1882年よりも前からすでに認知度があり、類似品が出るほどの人気の商品になっていたことがうかがわれます。

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↑ L’art du biscuit;1995 Patrick Lefèvre-Utile著より


実際LUポスターやパッケージデザインは美しいものが多く、ガトーナンテのパッケージにもいくつか違うデザインのものが見られます。

1900年から1910年の間に行われたエキスポでGrand Prixを受賞したメダルが描かれているものもあり、
上の写真の箱にもMarque déposéeの文字が見られますので、裁判後しかるべき時に商標登録されているようです。
※Petit beurreの商標登録を創業者の息子ルイが行っているので、その頃に登録した可能性有り

ガトーナンテをLUの初代夫婦が作っていたのは確かなことですが、いつ頃から製造していたのかははっきりせず、彼らがルセット考案したものかも不明です。
前述の「L’inventaire ・・・」には、
コラムニストのPaul Eudel(1837-1911)によれば、「1820Saint-Clément通り(現在のrueMaréchal-Joffre)に店を出した、フアス職人の王、Rouleauによって発売された同名の製品と似たものなのだろうか?
と書かれています。

Lefèvre;LUの歴史(初期)について

ここでLUの歴史について少し触れておきましょう。
ロレーヌ地方出身Jean-Romain Lefèvre184627歳の時、ナントの5 rueBoileauにあったパティスリーで働き始め、それまでナントで一般的だったビスキュイとは別の、ロレーヌ地方のビスキュイを製造(LUの創業年はこの年)

1850年にPauline-Isabelle Utileと結婚した際にこのパティスリーを購入
この時の工房の名前は「Fabrique de biscuits de Reims et de bonbons secs」でした。

その後工房が手狭になりUtile家の莫大な援助により、1854年隣の角地7 rueBoileauにピカピカの店を開店。
1860年に二人の名字を合わせた「Lefèvre-Utile」に店名を変更。
1883年末息子のLouisが跡を引き継ぐ。1885年、おじの援助で駅近くにあった古い紡績工場を購入、機械化と大量生産を開始。
新しい工場の目玉として考えられた新しいビスキュイの1つがPetit beurre1886年ルイはPetit-beurreのルセットと抜型のデザインを考案。


ガトーナンテはいつからある?古書から見るその歴史
Gâteau nantais」とは「ナントのお菓子」という意味で、ナントで作られたすべてのお菓子に対して通用する一般的な名前であるため、その形状やルセットが分からなければ違いははっきりしません。
実際に古書を紐解くと
Gâteau nantais 」のルセットがいくつか見つかりました。
その中で一番古いのは
La Cuisinière de la Campagne et de la Ville;1853(33)Louis Eustache Audot(1783-1870)著に「Gâteau nantais」掲載(1843年に出版された版には掲載されていない)
Pierre Lacam著「Le Mémorial historique et géographique de la Pâtissier 1890」には「Le Nantais」「Petits nantais」「Nantais au rhum」の3種類掲載。
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クッキータイプのガトーナンテ「La Cuisinière de la Campagne et de la Ville」より

アントルメサイズ、プティガトーの違いはありますが、これらの「Gâteau nantais」はいわゆるガトー・ナンテとは異なり、クッキータイプ。
縁を菊型にして、アーモンドダイス、砂糖を散らして焼くのが定番のようです。
ちなみにこの地域でエピファニーの際に見られるサブレ生地のガトーデロワ同様、アントルメサイズのガトーナンテもガトーデロワとしても使われていました

フアス職人Rouleauのガトーナンテ、どちらのタイプだったのか。
残念ながらRouleau
のことを探しても全く手掛かりが出てこない為、検証することができません。


現代のガトーナンテ
1988年に製造が中断された後、LUのガトーナンテ。
LU1977Générale Biscuitグループに統合。1986Générale BiscuitLa Haie-Fouassièreに超近代的な工場を建設し、1987~1989年の間に移転。超近代的な工場ではそれまで働いていた職人では対応できず、淘汰された製品もあっただろうと想像。製造中止の年からするとおそらくこの移転がきっかけでガトーナンテの製造が終わったのではないかと想像しています)

Bouvron にある「Les delices du fou du roy」という会社では
Gâteau nantais Le Monarque」という名称で商標登録されたガトーナンテが作られています。
これは
LUのガトーナンテを継承し、同様にバターを使用しないルセットになっています。

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↑ナントのLes Rigolettes nantaisesのショーウインドーに飾ってあったモナルク

そして現在、ナントのパティスリーではそれぞれ独自のガトーナンテが作られています。

ナントへは2000年代に何度か訪問し、モナルクをはじめいくつかのパティスリーで購入。見た目は似ているものの、どれもそれぞれ個性的で楽しい食べ比べとなりました。

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↑Gautier Debottéで購入したガトーナンテ(2006年)

2021年の今はどんなガトーナンテがお店に並んでいるのでしょう。


※※※






仏蘭西菓子研究所が神戸・三宮にあるルーサロメで年4回開催している「フランス地方菓子セミナー」
第23回セミナー(2021年7月27日)では『Gâteau nantais;ガトーナンテ』バターを使用しないルセットのデモを行いました。

バターを使用したガトーナンテ、古書のルセットを再現した3種類のサブレタイプのガトーナンテも一緒に食べ比べしていただきました。
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Commented by M at 2021-08-02 08:03 x
ガトー・ナンテGâteau nantais
シンプルな美しさのお菓子ですね。
ラム酒がたっぷりだけど、アルコールが苦手な私も
美味しく食べられそうです。アプリコテされているから。

LUのガトー・なんてのパッケージ素敵ですね。
昔のパッケージは素敵です!

チェコの今で言うデザイナー・イラストレターの
LUの広告を昔見てサブレ・なんてやビュスキュイ、
ガトー・ナンテを食べてみたいともいましたね。
渡仏当初時は、スーパーでLUのビスキュイを見つけて、
嬉しくなりました。

最後のガトー・ナンテの箱のパッケージ・デザインも
素敵ですね。お菓子もルックスからして、美味しい!
Commented by Ethno-PATISSERIE at 2021-08-02 09:56
Mさん、
コメントありがとうございます!
パッケージが美しいとわくわくしますね♪

LUのガトーナンテ、食べてみたかったです。
モナルクと同じなのか?自分で作ったのと違いはあるのか?気になります。
by Ethno-PATISSERIE | 2021-08-01 19:46 | ⑱Pays de la Loire | Trackback | Comments(2)

<仏蘭西菓子研究所>フランス地方菓子&行事菓子 ガトーデロワ&フェーヴ *by roiboit*


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